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片時雨を抱きしめて
第2章 第二章 片時雨




「話さなきゃ、だめ?」
「うん」
「なんで?」
「だって綿谷は俺の大事な生徒だもん。俺にできることなら、なんでもする」
「なんでも?」
「そうだよ、なんでも。現に今だってあてのないお前を泊めてやってんだから」
先生が少しだけ悪い顔をしながら笑う。

心臓がぎゅ、とつかまれたあと、その心臓よりも下、お腹の奥が甘く疼く。


じゃあ、さ、先生。

私は不意に、自分を傍観していた。
不思議な緊張におそわれて、体がゆるく震える。


自分の頭と、口が、言葉を発する器官すべてが、切り離されて__。

私が私でないような、そんな浮つきに襲われた。

こんな気持ちになったのははじめてだった。


自分自身が、わからなくなる。体はずっと震えたままで、予期せず口が開く。


「じゃあ



「抱いてよ」



え、と、口に出した瞬間私は私自身を心から疑った。
ほんとに、私がいったの__いまの、だって、私、


状況を把握できていないのは私だけではなないようで、先生も苦くわらったままなにも言わなかった。


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