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片時雨を抱きしめて
第2章 第二章 片時雨

先生、
「せんせい、」
先生、私は。
その言葉に続けられるものがもう何も見つからなくて言葉の乗っていない吐息だけが口をついた。
無自覚に、私は先生に欲情し続けていた。
その細い腕も、細やかな指先も、見かけよりは分厚い体にも、長くて白い首にも、小さく薄い唇にも、すうっと通った鼻筋、切れ長の奥二重、やわらかく伸びた前髪、そのすべてに私は欲情していた、無自覚に。
「綿谷、落ち着いて、ね。
なんか、あったの」
私の発する分厚い空気を割いたのは先生の私を気遣う言葉だった。
先生はいつものようにやわらかく笑って、私の目を見た。やさしい眼差し、”先生”の、眼差し。
「____っ」
私はどうしようもなく悔しくて、恥ずかしくて___。
「綿谷、俺きくから。なんでも」
先生の腕がまた、___私のほうへ伸びる。
手のひらのあたたかさが、頭に伝わる。甘く電気の走ったような、ただ頭に触れられているだけなのに、それだけなのに。
体が、疼く。その甘さに私は目をきゅっとつむる。

