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朏の断片‐ミカヅキ ノ ダンペン‐
第5章 #4
「口が悪い」
指に歯をたてて軽く噛み付くと上田の肩が跳ねた。
「ぎゃっ!……ごめんなさいっ」
「名前で呼んで?」
「えっ。……みゆき、さん?」
何でやねん。どこまで急に改まるのか、上田のオドオドっぷりに笑える。
「ユキって、呼び捨てでええで」
「わか、った」
噛んだ指が痛かったのか、お詫びのつもりで舐めると思いの外上田がいい声を出した。目が合うと恥ずかしそうにそらされる。
(……ふぅん)
上田の手はその辺の女子よりよほど白くて綺麗だった。子どもの穢れを知らないみたいな無垢な輝きがあった。ほんとは人間ちゃうんやないかな、と脳裏に浮かびながらも本能のままにその手に舌を這わせる。まるで甘い香りが溢れてくるようなそんな錯覚、指を一本一本口に含んでしゃぶるとぐったりともたれ掛かる上田の髪が肌をくすぐった。