この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
朏の断片‐ミカヅキ ノ ダンペン‐
第6章 #5
「どしたん……?」
暗いままの部屋に入り、上田の前に片膝をつくと、上田は三角座りの膝に物憂げな目を覗かせていた。しばらく沈黙のあとポツリポツリと呟く。
「医者が言うには……移植って事例自体が世界でもあんまりなくて……性同一性障害とかでもないし……法律的にも技術的にも、それはどうかって」
「待て待て待て。何の話や」
片桐の頭はハテナに埋め尽くされる。上田はついに下を向いて肩を震わせはじめた。
「美希が死んだ」
「――なん……?」
頭がついていかない。何を言っていいか咄嗟には浮かばない。