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朏の断片‐ミカヅキ ノ ダンペン‐
第6章 #5
「もともと二十歳まで生きられないってずっと言われてたから、俺、美希に」
――ずっと尽くしてきた――
ボロボロと落ちた涙が膝を濡らしていく。グズグズと鼻をすする音が部屋に響いた。
壊れ物に触る気分でそっと手を伸ばして髪に触れる。手が震えた。
――すべて擲ちずっと尽くしてきた美希は、だけど死んでしまった――
「それでも、俺、美希に生きて欲しくて」
髪から頬へ手を移すと涙で髪が貼り付く。
「性転換手術してほしいって言ったんだ」
「…………っ」
心臓を鷲掴みされたような気がした。話が飛んでよく見えないが、上田がヒステリックになっているのはわかる。
美希が死んだ。
それでも生きてほしくて、手術をだと?
臓器の一つであっても生きられるように、美希を真希へ移植する――死んだ双子の性器を移植しての性転換手術なんて聞いたことがない。
つまりは最初に言ったのが結論なんだろう。