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唇果実
第3章 ユウリ
小学生の頃のユウリはとても不安定な子だった。
アトピー性皮膚炎に悩まされていて、肌はカラカラで痒みに耐えられず、自らの小さな爪を突き立てていつも何処かしら血が滲んでいた。

もともと負けず嫌いを潜ませた彼女ではあったけれども、やはり自身の容姿を気にかけ始めてからは症状に上乗せして高くつく自尊心の傷とも戦わざるをえなかった。

終わりの見えない疼きから逃れる術は安易な薬では得られず、ベトつき嫌にギラついたステロイド軟膏を厚く塗りたくったところで、健康な子と自分を隔離する壁程度にしか用を足さなかったし、その粘着質な肌と引き換えに得られる効果は傷付いたプライドには塩であり、痛みは増すばかりだった。

完治の目処も約束も手にすることができない地獄から救ってくれる神などいないと気付いて、とにかく単純で治癒を信じられる痛みを差し出し、爪を思い切り深く切り落とした。

そして勉強や読書に没頭させることで自ら傷つくことや感情を押さえつけ、ひたすらに耐えた。
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