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硝子の初恋
第8章 かげり始めた幸せ
「年越しに間に合ったな」

あんなに猛ダッシュしたのに、高臣の息はすっかり整っている。

「眞斗、自転車漕ぐの早過ぎ! 寒かったぁ」

「鼻真っ赤だな」

高臣の言葉に、まゆなは慌てて自分の鼻を押さえる。

「自転車止めてくるからここで待ってて」

少し離れた神社の自転車置き場に、自転車を停める高臣。

まゆなの方を向いた時、

(……?)

まゆなの方を見つめるサラリーマンが視界に入った。

特に何がおかしい訳でもないけれど、何か妙な胸騒ぎがする。

「眞斗!」

駆け寄ってきたまゆなの声に、高臣はハッとしてそちらを見た。

「もう!こんな至近距離で迷子にならないでよ」

まゆなが高臣の腕に腕を絡める。

もう一度サラリーマンの方を見たが、既にサラリーマンの姿はなかった。

(……気のせいか?)

高臣は、腕を引いて歩き出すまゆなの後ろ姿に、嫌な胸騒ぎを覚えずにいられなかった。
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