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硝子の初恋
第8章 かげり始めた幸せ
寒い中、1時間近く待っただろうか。ようやく高臣とまゆなに参拝の順番が回ってくる。

(お願い神様、この幸せがずっとずっと続きますように! どうかこのまま眞斗とラブラブでいられますように)

まゆなは両手を顔の前で合わせ、必死の形相でお願いをした。


「眞斗、何お願いした?」

自転車置き場に向かいながら、まゆなが高臣に聞く。

「絶対聞くと思った」

高臣は吹き出す。

「マニュアル通りですみませんね!」

「まゆはすげー必死にお願いしてたよな? 何をお願いしてたかは想像つくけど」

膨れるまゆなを見て、楽しそうに笑う高臣。

「嘘?! まさか声に出てた?!」

「出てた出てた。大声で叫んでた」

「叫んでないよ!」

先程よりも頬を膨らめて抗議するまゆな。楽しそうに笑いながらまゆなを見つめる高臣。その視界の端っこに、また胸騒ぎを覚える。

(─────…?)

何となく視線を感じて、そちらへ視線を送る高臣。

(あいつ……さっきの……ッ!)

胸騒ぎを感じたその場所に、先程のサラリーマンがいた。半笑いを浮かべて、まゆなの方を見つめている。

(アイツ……まゆを見てるのか?)

これだけ人が居たら、その視線の先は違うかもしれない。半笑いのその顔に嫌な胸騒ぎを覚え、そのサラリーマンの視線がまゆなに向けられていない事を願う高臣。


「豚汁無料配布中だって! ねぇ、眞斗、行こうよ!」

「あ? ああ」

まゆなに腕を引かれ、高臣はそのサラリーマンから目を離した。

すぐにまた振り返ったけれど、人混みに紛れてしまったのか、サラリーマンの姿はもうそこにはなかった。
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