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硝子の初恋
第9章 突然のサヨナラ
鍵当番だったまゆなは、プール内の戸締りを確認し鍵を返して、自転車置き場へ来ていた。

「あれ? 一輝?」

自転車置き場には、一輝が残っていた。

「まゆ!!」

一輝は相当驚いたらしく、あわあわと言葉にならない言葉を発している。

「あれ? それって眞斗…高臣先輩の自転車……」

一輝の跨っている、見覚えのある自転車を、まゆなは指差した。

「きょ、今日だけ交換してくれって! ごめんな! じゃあな」

早口でそう言うと、一輝は猛スピードで走り去る。

「あ……」

走り去る一輝の向こうに、門の方へ自転車で走って行く高臣の姿を見つけた。

高臣の自転車の後ろには、女の子の後ろ姿。

(あれって……立石さん?)

ほとんどの生徒がワイシャツの上はセーターなのに、つぐみは真面目にブレザーを着ている。

背中の真ん中辺りまで伸びたストレートの黒髪に、ブレザーの後ろ姿は、間違いなくつぐみだ。

(立石さんと二人乗りしたかったから、一輝の自転車借りたんだ)

ズキズキと痛む胸。
溢れ落ちる涙。
まゆなはその場にしゃがみ込み、声を殺して泣いた。
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