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硝子の初恋
第10章 サヨナラの理由が知りたい
「あ、一輝!」

沙有里の大声に、まゆなと一輝は気まずそうに顔を合わせる。

昨日、高臣は、一輝の自転車の荷台につぐみを乗せて帰った。

(どんな風に一輝に言ったのかな……)

まゆなが一輝の方を見ると、一輝は慌てて目を逸らす。

(口止めされてるのかな……。一輝だって、ホントはこんな事に関わりたくなんかないよね……)

まゆなはため息を飲み込み、立ち上がる。

「まゆ? どうかした?」

「ロッカーに教科書取りに行くだけだよ」

そう言うと、まゆなは一輝と目線を合わせないように、サッと廊下へ出た。

「はぁー」

ロッカーに凭れ、まゆなは大きくため息を吐いた。

「……ため息吐くと幸せが逃げるって知ってる?」

「渡辺くん!?」

文化祭で一年の王子様に選ばれたクラスメイトの渡辺が、まゆなの前に立っていた。

文化祭での渡辺の真っ直ぐな告白に、まゆなも自分の気持ちをキチンと伝えていた。

"高臣先輩が好きだから、他の人は考えられない"と。

"そっか"と切な気に笑った渡辺とは、その後は気まずくて挨拶程度の言葉しか交わしていなかった。

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