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硝子の初恋
第10章 サヨナラの理由が知りたい
「少しくらい逃げても平気だよ。私、すごく……幸せ…だから……」

強がって見せたのに、まゆなの声はどんどんと小さくなる。

「……嘘。声震えてる」

渡辺はまゆなの隣に立ち、同じようにロッカーに身体を凭れ掛ける。

「高臣先輩と別れた?」

「─────…ッ」

いきなりの言葉に、まゆなは驚いて渡辺を見つめた。

「あれ? 落ち込んでるなぁとは思ったけど……まさか図星?」

渡辺から返ってきた言葉に、まゆなはブンブンと首を横に大きく振った。

「ふーん」

そう言ったきり、渡辺は黙り込む。

「……教室戻るね……」

歩き出したまゆなの手を、渡辺が掴んだ。

「……俺、神崎の事、結構マジだよ?」

「え?」

「……すぐに別れるだろうと思ってたのに、あの高臣先輩がどんどん神崎にマジになってって……。神崎が笑ってるなら、俺は黙って身を引こうと思ってたのに……そんな顔されてたら放っておけない」

渡辺の真剣な瞳に、まゆなは手を振り払う事も忘れ、目を逸らす事も出来ずにいた。
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