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硝子の初恋
第10章 サヨナラの理由が知りたい
「ねぇ、眞斗……」

屋上から立ち去ろうとする高臣の背中に、つぐみが声を掛けた。

「私、さっきまゆちゃんとここで会ったのよ」

「お前ッ、まゆには何もしない約束だろ!?」

振り返った高臣の声や表情に、怒りの色が混ざる。

「私が呼び出されたのよ!」

「はぁ?」

「眞斗の様子がおかしいって。眞斗がスランプなのは、私のせいだって言うの」

「……ッ」

こんな時にまで高臣の心配をするまゆなに、高臣の心がギュッと締め付けられる。

「だから言ってやったの。眞斗のスランプは、神崎さんが眞斗の目の前をウロチョロするからでしょって。眞斗は監視されてるみたいで嫌な気分でしょうね。気まずいんでしょうねって。そしたら神崎さん、涙流して───…」

話しながら、まゆなの涙を思い出し笑いが隠せないつぐみ。その話の途中で、高臣に胸倉を掴み上げられたつぐみの身体が浮き上がった。

「きゃっ?! ちょっと! 離して!!」

つぐみはジタバタと暴れた。

「まゆを傷付けるような事すんな!」

今までのどんな時よりも本気で怒りを見せる高臣に、つぐみは一瞬怯んだ。

「……してないわよ、まだ…。今のところ、眞斗は私の事だけ愛してくれてるみたいだから」

動揺を悟られないように、高臣を睨みながらつぐみが言った。

「……名前で呼ぶな。俺はお前なんか大っ嫌いなんだよ!」

手を離し、振り返りもせずに立ち去る高臣。

「また今日も抱かず終い? せっかく手に入れたのに、意味ないじゃん」

高臣の出て行った屋上の扉を見つめて呟くつぐみ。

「大嫌い……かぁ」

涙混じりのつぐみの声は誰にも届く事なく、ため息と共に消えた。
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