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硝子の初恋
第11章 再び重なる心
「ひっ……」

まゆなは小さく悲鳴を上げ、振り返る。

いつもは暗くてハッキリ分からなかったけど、20代後半か30代くらいの男だ。

ボサボサと伸びた髪と無精髭。口元は、やはり今日も半笑いだ。

「やっぱり……神崎 まゆなちゃんだ……」

「何で……私の、名前……」

フルネームで名前を呼ばれた怖さから、まゆなはつい聞き返していた。

「ウサギみたいに寂しがり屋のまゆなちゃん……いつも見てるよ……」

半笑いのまま、ボソボソと話すサラリーマン。

まゆなは怖くなって後ずさる。

「またサイトにアドレス載せてよ……毎日メールするから……毎日寂しくなんてさせないから……」

ドンッと商品棚に背中が当たり、まゆなは弾かれたように走り出した。

ガタガタと震え出す身体を必死に動かし、自転車を漕ぎ出すまゆな。

サラリーマンは追い掛けてくる気配もなく、いつものように半笑いのまま、まゆなをじーっと見つめていた。
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