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硝子の初恋
第11章 再び重なる心
「…………振られたんです、私」

「え?」

コーチは驚いた顔をして、まゆなを見つめている。

「やっぱり……別れた彼女が目の前をウロチョロしてるのが悪いんでしょうか?」

「いや、そんな程度でスランプに陥るような奴じゃねぇな……何か違う…他に理由がある気がする……」

コーチのその言葉に、まゆなの気持ちが少しだけ軽くなる。

「高臣はさ、昔は女関係最悪だったけど、神崎と付き合ってから変わっただろ? 真剣なんだってちゃんと伝わってきたから、俺も何も言わなかったんだよ。なのに、高臣から神崎を振るとか……何か変だよな」

コーチは顎に手を当てて考え込んでいる。

大学を出たてのこのコーチは部員たちとも歳が近い。言わば兄のような存在だ。

大会で入賞する程の実力を持つ高臣に対しては、自然と会話も増えるし、コンディションを見るためにその言動を観察する事が増える。

まゆなと付き合い出し、変わっていく高臣にコーチのみならず、他の水泳部員も気付いていた。マネージャーとしてまゆなが近くにいるおかげか、記録もグングン伸びて行った。授業も真面目に出るようになったと顧問も喜んでいたくらいだ。

「高臣、昔は相当遊んでたからな。何か弱味握られて脅されたか……でもそんな事で神崎と別れるとかはないな……」

「コーチ?」

まゆなの不安気な声に、コーチは我に返る。

「あー、悪かったな、呼び止めて! 俺なりに理由探ってみるわ。ありがとうな」
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