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硝子の初恋
第12章 踏み出す勇気
「うん……」

まゆなはチラリと後ろを振り返る。

いつもは半笑いで緩んでいるサラリーマンの唇が、今日はキツく閉じている。その目は高臣を睨んでいて、まゆなは怖くなった。

自分に何かされるよりも、高臣に何かされる方が怖い。

(あぁそうか…だから眞斗は私のために……)

もし今、あのサラリーマンに"高臣を傷付けられたくなかったら言う事を聞け"と言われたら、まゆなは言われた通りにするだろう。

同じ気持ちで、高臣は自分を守るためにつぐみと不本意な関係を続けていたんだと、まゆなは気付けた気がする。

「眞斗…ごめんね……」

「何だよ、いきなり?」

怪訝な顔でまゆなを振り返る高臣。泣きそうな顔をしたまゆなにハッとした。

「……どうした?」

高臣が自転車を漕ぐスピードを緩める。

「立石さんやあの人に、何言われても…何されても……眞斗の事が好きだよ」

溢れた涙がまゆなの視界を歪める。

「それは俺も同じ。だから謝んな」

見上げた高臣の顔が優しくて、まゆなの瞳から零れ落ちる涙が嬉し涙に変わっていた。
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