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硝子の初恋
第12章 踏み出す勇気
つぐみの父親は、大手の会社社長だ。そんな家に、一人娘として産まれた。

子供の頃から、母親に反抗する事は許されなかった。甘える事も許されず、抱き締めてもらった記憶もなければ、褒められた事もなかった。

母親の決めた目標を必死になって達成すれば更に高い目標を掲げられる。また必死になって達成すれば、更にまた高い目標を掲げられ、どんどん上がっていく目標に向けて頑張り続けなければいけない。

そのために、放課後は毎日お稽古事がある。

それが終わる頃には門限の時間だ。

友達とどこかに遊びに行った事なんてない。

そんな環境で、恋人なんて作れる訳がない。

『立石の名に恥じないように』

子供の頃から今でも毎日、幾度となく母親に言われ続けている。

その言葉が常につぐみを縛り付け、子供の頃から家でも学校でもお稽古場でも、いつでもどこでもいい子を演じなければいけなかった。

悔しくても悲しくても、どんなに嫌な事でも、常に笑顔。満面の笑みを作るのも慣れた。

今では、どれが本当の笑顔なのか自分でもわからないくらいだ。
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