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硝子の初恋
第12章 踏み出す勇気
まゆなと沙有里は、帰りの挨拶もそこそこに教室を飛び出し、大学のプールへと急いだ。

一番乗りで大学のプールに着く。

「まゆは先に機械室に行ってて! 私がコーチを拉致して連れてく」

「ら、拉致!?」

沙有里は、思わず大きな声を出したまゆなの口を押さえて機械室に押し込む。

そして、鼻歌交じりにやって来たコーチを、言葉通り沙有里が拉致をした。

機械室で、まゆなと沙有里がコーチにも全ての事情を話した。

「はぁ──…、高臣の奴、思ってたよりもすげー事抱えてたんだなぁ。てか、ガキの世界も大変なんだな」

コーチはまゆなの顔を覗き込む。

「大丈夫か?」

「え? 私?」

辛かったのは眞斗なのに…と、まゆなは怪訝な顔をする。

「立石って、あのでっけー会社の一人娘だろ? 最近婚約したとか言う…」

「婚約!?」

コーチの言葉に、まゆなと沙有里が揃って大声を出した。

「あれ? 知らねぇの? 何だっけなぁ……あ、桐生! 桐生の次男と婚約したんだ、確か」

「桐生? どこだかの銀行の頭取の?」

さすがは情報通の沙有里。まゆなにはさっぱりわからない話だ。

「そうそう! 岡元、よく知ってんじゃん。4月には桐生の系統の金持ち学校に転校すんだろ、そのお嬢さん」

「えぇ!?」

「……お前ら、相手の情報少な過ぎだろ」

またも大声で驚くまゆなと沙有里に、コーチはため息を吐いた。

「転校が本当ならさ、あと少し辛抱しろよ。お前らみたいなガキがどうにか出来る相手じゃねぇぞ」
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