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硝子の初恋
第12章 踏み出す勇気
「眞斗! タイム戻ってきてるじゃん!」

まだ本調子とはいかないが、少しずつ調子を取り戻しつつある高臣。まゆなは嬉しそうに駆け寄り、タオルを渡す。

「まだまだだけどな」

そう言いながらも高臣も笑顔を見せる。

「高臣! 気ィ抜いてんな! 記録会近いんだぞ!」

「はい」

コーチの怒声に肩を竦めてみせる高臣。

まゆなにタオルを渡すと、行ってくるとスタート台へ歩き出す。

「愛の力、だねぇ」

その様子を見ていた沙有里がまゆなに抱きつく。

「眞斗は…強いんだよ」

まゆなは、スタート台に上がる高臣を見つめる。

ゴーグルを着けた高臣の目線はわからない筈なのに、確かに目が合った。一瞬、高臣の口元が上がった気がする。

(私は、眞斗に何をしてあげられる?)

高臣の泳ぎに胸をときめかせながら、まゆなは非力な自分が悔しくてぎゅーっと手を握りしめた。
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