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硝子の初恋
第13章 男としてのケジメ
渡辺の言葉に、つぐみはクスリと笑う。

「過去形なのよ? 高臣先輩は神崎さんが好きだった……今は毎日私を抱いてるのよ?」

「!?」

初めて聞いたのか、渡辺は驚いた顔を上げつぐみを見つめる。

「私と高臣先輩が堂々と交際する為には神崎さんが邪魔なの。彼女諦めが悪くてね、まるでストーカーみたいに高臣先輩につきまとってるのよ?」

今すぐ飛び出して行って"嘘だ!"と叫びたい。まゆなと沙有里は、互いの身体をキツく抱き締め合い、耐えた。

「……嘘だ」

渡辺が掠れた低い声を絞り出す。

「高臣先輩は変わった。チャラくてガキで…でも何か妙に冷めてた高臣先輩を、神崎が変えたんだ」

渡辺の言葉に、まゆなも沙有里も、そしてつぐみでさえも聞き入っていた。

「俺も立石と一緒で、神崎の気持ちを自分の方に向かせようと高臣先輩の弱味みたいの探してた。で、逆に気付いた。今までの高臣先輩じゃねぇんだよ。神崎が変えたんだよ。敵わねぇよ……」

渡辺がグッと拳を握り締めた。

「立石との関係ってやつも、どうせ神崎に関係する事で高臣先輩を脅したとかだろ? それで気付けよ! 高臣先輩は、神崎の為に水泳辞めろって言われたら辞められる。神崎の為なら自分犠牲に出来るくらい神崎の事想ってんだよ! 自分可愛さに他人犠牲にする立石じゃ無理なんだ! 気付けよ!」

渡辺の…声も身体も震えていた。

この何ヶ月かで想い知らされた。でも認めたくなかった。諦めたくなかった。

(俺の完全な負け……)

渡辺は握った拳に更に力を入れた。
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