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硝子の初恋
第13章 男としてのケジメ
まゆなの頬を流れる涙を、沙有里がそっと拭った。

「まゆはここにいて!」

小声でそう言うと、沙有里は物陰から飛び出した。

「あんた最低だね」

突然姿を現した沙有里に、つぐみが驚いた顔をした。

「片想いなんて誰でもする。まゆだって、中学の頃から高臣先輩に片想いしてた。高臣先輩の周りにはいつも女の子がいて、自分もファンの女の子の中の1人に過ぎなくて、絶対叶うわけない恋だって、なのにどうしても諦められないって何度も泣いてた!」

昔からの友達である沙有里だからこそ知る、まゆなの片想い。

遠目に見える高臣の笑顔に顔を真っ赤にしてニヤけたまゆな。観覧席から見た試合で、入賞した高臣に飛び上がって喜んだまゆな。

毎年渡せずに持ち帰ったバレンタインのチョコ。いつでも綺麗で派手な女の子に囲まれていた高臣。近付く事すら出来ず、遠くから見るばかりの目を合わす事もない、まるで"アイドルへの恋"

辛い、もうやめたい、いっそ嫌いになりたい…そう泣いていたまゆなを、沙有里はいつも隣で見てきたのだ。

「切なくてもどかしくて、気持ちが溢れて泣くとか、誰でも経験してる。どうにかして手に入れたい気持ちはわかる。でも、想い合う2人を引き裂いて脅してでもなんて最低! 渡辺の気持ちまで利用して手に入れようとするなんて、あんたには片想いする資格もない!!」

無言でじっと沙有里を睨むつぐみ。沙有里も負けじとつぐみを睨み返す。
その迫力に、渡辺もまゆなも身動き出来ないでいた。

一触即発の雰囲気を破ったのは、昼休みの終わりを告げる予鈴だった。

くるりと向きを変え、教室へと歩き出すつぐみ。

まゆなと渡辺は、はぁーっと安堵のため息を吐いた。
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