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硝子の初恋
第3章 後悔先に立たず
屋上から逃げ出したまゆなは、その後も早足で校舎を駆け抜け、一年棟へ入った。

「神崎! やっと見つけた」

「渡辺くん? え?!」

教室手前で、まゆなは、昨日一年の王子に選ばれた渡辺 修士に呼び止められ、物陰に連れ込まれた。

「昨日からずっと探してたんだよ? 放送、聞いてくれた?」

「あ!」

昨日の校内放送で、渡辺から告白された事を思い出し、まゆなは顔を赤らめる。

「あ……あの……ありがとう」

あんなに真っ直ぐに告白された事が嬉しくて、まゆなは御礼を言った。

「……それって、返事はOKって事?」

「え?! ちがッ!」

「嘘ー、俺、振られる?」

「やっ……そのッ……あの……」

まゆなは俯く。

あんなに真っ直ぐに告白してくれたんだから、キチンと応えなければいけないと思った。

「あのッ、私……その、す……好きな人が……います」

恥ずかしさに俯き、口ごもりながらも、まゆなはそう言い切る。

中学の時、水泳の大会で高臣を見て以来、ずっと高臣が好きだ。

あんなひどい事をされたのに、やるならいっそ、もっとひどくしてくれたら嫌いになれたのに……。

高臣の優しい声や触れる指に、まゆなの心はまだ、高臣から離れられないでいた。

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