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硝子の初恋
第5章 名前は特別の証?
その後は、沙有里が積極的に侑吾に話しかけ始め、まゆなはホッと胸を撫でた。


「なぁ、まゆ。何で侑吾は名前で、俺は苗字なの?」

隣にいる高臣が、まゆなの顔を覗き込む。

「え?! だって、侑吾先輩は名前しか知らなかったから」

「……なんかムカつく」

「じゃあ、これからは佐野先輩って呼びます」

「そっちじゃなくて!」

「え? どっち?」

「……俺の事も名前で呼べ」

予想しなかった高臣の言葉に、まゆなの思考が一瞬止まる。

「まさか……名前知らねぇとか、ふざけた事言わねぇよな?」

まゆなは首を横にブンブンと振った。

「ま……なと……先輩……」

「先輩はいらねぇだろ」

「まな…と?」

「何?」

「う……恥ずかしい……」

顔を赤らめて俯いたまゆなの頭を、高臣は嬉しそうにポンポンと軽く叩く。

「もしもーし! 周り完全無視して2人の世界入るのやめてくんない?」

そう言った侑吾は、沙有里に「ねぇ?」と同意を求める。

「佐野くん、午前中休ませてやったんだから、残り2時間はちゃんと出席しなさいよ!」

少しキツめの坂上の言葉に、侑吾が渋々返事をすると、4人は揃って保健室を出た。

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