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好きと依存は紙一重
第5章 好きと依存は紙一重
「ねぇ、ヒュー。今彼女いる?」
 開店準備をしている日向に質問を投げかける。日向は作業する手を止めると、お冷を持って未亜の隣に座った。
「なんだよ、いきなり」
「ね、いるの? いないの?」
「いるわけないだろ? 作る気ないんだから。俺はワンナイトで充分」
「だよね。ヒューが彼女作ったら、世界が終わる」
 安堵のあまり軽口を叩くと、日向はしかめっ面をして未亜を睨む。
 彼もまた、未亜と同じく恋愛感情というものを知らず、女性とは躯の関係しか持たない。

「それで、それがなんだっていうんだよ?」
「彼女いる人にキスしてなんて言えないからさ」
「は?」
 未亜を凝視する日向の目には、怒りが薄っすら滲んでいるように見えた。

「アタシさ、色んな恋愛映画とか恋愛小説とか、少女漫画とか見てきたけど、やっぱり好きって分かんない。その人のことを考えただけでドキドキするとか、その人のことしか考えられないようになるとか。けど、連に依存して、いくつかは恋愛感情に似てなくもないところがあるっていうか」
「何が言いたいんだ?」
「アタシもよく分かんない。けど、最後まで聞いてよ」
 イラ立つ日向を気にすることなく、冷えたキャラメルラテで喉を潤す。ひと区切りと息を吐くと、再び口を開いた。

「一緒にいると落ち着くとか、他の女が連に勘違い妄想押し付けるのにイラつくとか、どこかに行っちゃうと思うと寂しくなるとか、ここんとこ、恋愛感情に似てるかなって思う反面、依存してるからなんじゃないかって」
「そんで、それが俺にキスして欲しいってのにどう繋がるんだ?」
 日向の問いに、未亜は少し考え込む。
「jesterの放火未遂あったじゃない? あの日、アタシあの放火魔にレイプされかけたんだ。アイツ、アタシがデリ嬢やってた時の客で、キスも何回かしたことあるのに、あの時はキス迫られてすっごく気持ち悪くて、怖かった。それはあんなキモいヤツと無銭でそんなことするのに嫌悪したのか、連のことが好きで、他の人にキスされるのが嫌だったのか? それが知りたい」
 一気に喋りすぎて喉が渇き、キャラメルラテを飲み干した。甘い飲み物では、逆効果だと知る。
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