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泥に咲く蓮
第2章 蕾、色づき
昼休みのチャイムが鳴ると、梨花はこっそり屋上に向かった。ランチボックスを片手にキョロキョロと用心深く辺りを見回す。

昨日はたまたま、シバに附けられたのかもしれない。あの場所は、これ以上他の人に見つけられたくない。
こっそり行って先客がいたら諦めて戻ろう…。
できるだけ音を立てずにフェンスを登り、給水タンクの影から覗いてみた。
誰もいない。
ほっと安堵し、影に座ってランチボックスからフルーツサンドを手に取った。
パイナップルの甘酸っぱさがたまらない。

午後の三者面談を想像しただけで、このまま現実逃避したい気分になる。

欲情より前に、亮二を意識しだしたのはいつからだったか…。

職場だった病院で治療の甲斐なく母が死んだ時、通知や葬儀など色々な手続きをしてくれたのは、仲が良かった同僚看護師の渡辺佳奈だ。
病に倒れる前から母は、自分に何かあっても梨花が困る事がないよう、最善を尽くしていたと聞かされた。
最期を悟った時には、絶縁していた親族に頭を下げていたと。
梨花だけが何も知らなかった。

葬儀に、祖父母にあたる翔子の両親の姿はなかった。
母の兄だという浅黒い肌の男性は母よりずっと年上にみえた。
気の強そうな太った妻が傍にいて、夫婦共に終始冷たく梨花をみていた。

母の伯父だという禿げあがった老人男性は、梨花をみるなり「まったく翔子に似とらんじゃないか」と言い、妻の肘鉄砲をくらっていた。
「ごめんなさいね、ほほほ」と同じく老いた妻は微笑む仕草をみせていたが、その表情はやはり冷ややかで目が笑っていない。

子供にもわかるほど不穏な雰囲気のまま、火葬し骨上げを待っていた。
狭い控え室は地獄のようだった。

「翔子さんはご両親が遅くに出来たお嬢さんで、とても可愛がってらっしゃったわ」
兄の妻、明美が抑揚のない声色で言った。
「本当に、甘やかせ過ぎてらっしゃったのよ。だからあんな男と…」
「おい、やめろ」
兄の謙太郎が顔をしかめて抑止する。
「あなただって同じよ。翔子さんをきちんと止めなかったから、ご覧の通りじゃないの。
まさか、こんなに早く亡くなるなんて…こんな子供を残して」
「………」
謙太郎は何も言わずビールを飲んでいる。

「翔子は子供の頃から謙太郎より気っ風のいい娘だったからな。正昭のやつも律子さんも、そりゃ可愛かったろうよ」














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