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泥に咲く蓮
第2章 蕾、色づき
少し離れて謙太郎の隣に座っていた母の伯父、正晴が顔を赤くしてニヤニヤと笑う。
すでに数本、ビール瓶が空になっていた。

「負けん気が強くて、年下の面倒見もいい子だったからな。さぞかし皆に慕われていただろうて」
「……」
「……」
明美も謙太郎も何も言わない。

「あなた、飲み過ぎはいけませんよ。ほどほどになさって」
正晴の妻、俊子が静かに窘めた。
「わしはまだそんなに飲んでおらんぞ」と正晴。

「とにかく」明美が梨花を見据えた。
「あなたのお母さんはね、私達夫婦やご両親に当たるお祖父様とお祖母様の言うことも聞かず…親の心子知らずとはこのことね。
あなたを身籠って、一人で勝手におうちを飛び出してしまったのよ」

容赦なく責めるような明美のトーンに、梨花は小さくなった。

「ダラダラ大学に行って適当に勤めるような人生は嫌だとかなんとか言って。
看護師になった途端妊娠だなんて」
「いいじゃないかぁ。ナースは翔子にぴったりじゃないか」

手酌でビールを注ぎながら正晴が大きな声で遮る。
「おなごが手に職をつけて働くんだ、立派じゃないかぁ」

萎縮して小さくなっている梨花を見かねて、渡辺佳奈が寄り添うように梨花の左側に座った。
梨花の手をそっと握り、包む。

「僭越ながら、お話に失礼致します」
落ち着いた、丁寧な口調で渡辺佳奈が切り出す。

「リカちゃんはこれから、どなたのご家庭で養育されていくのでしょうか。失礼ながら私は翔子さんから伺えていなくて…」

「筋で言えば祖父母にあたるうちの親なんだろうが」
謙太郎が重々しく口を開いた。
「両親もご存知の通り、もうすでに他界していてね。翔子が出て行った後めっきり老け込んで、心労が祟ったのかバタバタとな」

何も知らなかったとは言えず、梨花は俯いた。
重なった佳奈の手だけが優しく、暖かい。

「では…?」
「申し訳ありませんが、うちでは無理ですから」
謙太郎より先に、明美が大きな声できっぱりと言い切った。

「うちには三人も子供がいます。長男が大学受験を控えているし、長女も高校生、次男も来年高校受験なのよ。
ただでさえピリピリしているのにこんな事になって、ましてや居候を養育だなんてとんでもない」
「……」
謙太郎はまた黙ってしまった。

「うちもねぇ…もう、この年齢ですからね」
やんわりと俊子が続く。


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