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泥に咲く蓮
第2章 蕾、色づき
「私達も、子供も孫もたくさんいて…。
なんせ住まいは田舎ですのよ。
こんな街育ちのお嬢ちゃんを預かるなんて…ねぇ」
「なにを言っとるんだ、正昭の孫だぞぉ」
また正晴が大きな声を出した。

ビクッ、と梨花が身を固くする。

「田舎の年寄りの家だからこそ、若いもんが来ると助かる事もあるだろう。
雪の季節なんか特にな」

正晴の顔がニヤニヤと歪む。

「聞くがナースさん、あんたら、給料はどれくらいもらってるのかね」
「…仰有る意味がわかりかねますが」
渡辺佳奈の声がこわばる。

「いやな、翔子はしっかりした子だった。
その子が生まれてからも、いっさいわしの弟夫婦やこの兄謙太郎夫婦に連絡をよこさなかったと聞く」

「…はい、伺っております」

「若い女手ひとつでも子供を育てられるものかい」
「……数ある職種の中ではまだ現実的だろう、とだけ申し上げます」
正晴が前のめりに身を乗り出す。

「やっぱりそうかぁ。さすが国家資格だなぁ。
なら、保険なんかもたくさんかけられるのかね?」

ぎゅっと佳奈の手が梨花の手を握りしめた。
佳奈の体が小刻みに震えている。
言葉の真意はわからねど、きっとひどい事を言われたに違いない。

はじめて梨花は母に対し、恨めしく思った。

(おかあさん、なんでわたしを一人で置いていったの…)

ボロボロととめどなく涙が落ちる。
すでに身体中の水分が蒸発するんじゃないかというほど泣いた。でもまだ、こんなに涙が出るのか…。

その時、
「失礼します」
控え室の扉が開いて、礼服姿の亮二が入ってきた。

「鳥居亮二といいます」
物怖じせず、まっすぐ皆を見つめて頭を下げた。

「…生前、翔子さんとお付き合いさせていただいておりました」

(…知らない、誰?)
梨花は呆気にとられて目をまるくした。

「なんだぁ、いうほど美人でもないのに翔子のやつ、やりおるなあ」
正晴が下品な顔でゲラゲラと笑った。

「あんた、いくつだ?翔子より随分若いだろう」
座ったまま、訝しげに謙太郎が亮二を見上げる。

「二十七才です。もうすぐ八になります」
「はっ。大学生かと思った」
机になおり、謙太郎はグラスを空にした。
明美と俊子はまだぽかんと口を開けて亮二を見ている。

「僕が、リカさんの身元引き受け人になります」

隣にいる渡辺佳奈の震えがいつの間にか止まっていた。

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