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泥に咲く蓮
第2章 蕾、色づき
ハンカチを受け取りながら、梨花は

「…わたしの家族はおかあさんだけだから…」
そう言うのが精一杯だった。

この時初めて、亮二がとても優しげな、吸い込まれそうな瞳をしている事に気がついた。

「そうだね、ごめん。…少し落ち着いたら、ゆっくり話をさせてくれますか」
亮二は膝をつき、丁寧に頭を下げた。

「あらためまして、リカちゃん。僕は鳥居亮二です」
「…三崎梨花です…」

(今日初めてあった人達の中で、ちゃんとご挨拶してくれたのってこの人だけだった…)

梨花も同じように頭を下げながら、ぼんやりと考えていた。
さっきまでの大人達との対比のせいか、若く、穏やかな亮二の姿は、梨花の緊張を少し解いてくれたのだった。


(もしかして、一目惚れだったのかもしれないな…)

フルーツサンドを食べて終えて、梨花はスッキリしない空を見上げた。

今日も夕立は降るのだろうか。








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