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泥に咲く蓮
第3章 色づき、膨らみ
「学校の雰囲気って、どこも同じだなぁ。懐かしいなあ」
並んで廊下を歩きながら、亮二は楽しげだ。
約束より5分前、すでに彼は門の前にいた。
自分でも意外なことに、自然にふるまえている。

「リョウくん、おじさんっぽい事言ってる」
「れっきとした三十二才のオジサンだぞ」

チラッと梨花は彼の横顔を見上げた。
男性的な眉や額をしているが、大きめの瞳や唇が曲線的で、柔らかな印象だ。
白い薄手のカーディガンがよく似合う。

(童顔なんだよなあ…)

本人には言わず、心に留めておくことにした。

教室で担任が待っており、軽く挨拶した後、亮二と並んで座った。

「三崎さんの生活態度、授業態度、学習力、全て問題ありません」
向かいで吉田先生が指導要録を見ている。

「そうですか」
「ええ、テスト順位は上位の常連です。風紀を乱すような生徒でもありません」

梨花は、ほっと息をついた。
この前のテストは正直、自信がなかったのだ。
ここのところ、寝不足が続いているせいかもしれない…

「ただね、気になってたの。
進路予定がいつも空欄なのだけど、進学するのよね?
まだ具体的な進学校が選べないのかしら」
吉田先生が資料を閉じながら梨花の顔をみた。

「…わかりません」
つい、目をそらしてしまう。
「…」
「…」
「…リカちゃん、それってまさか、進学しないかもしれないって事?」
亮二が静かに尋ねる。
「…」
答えられなかった。

「…もしかして費用の事を気にしているのか?
奨学金制度を使わなくても好きな…」
「違うの」

亮二の言葉を遮ってしまった。

「本当にやりたい事がまだ見つからないの」

「ねえ三崎さん」
吉田先生が、優しく宥めるように続ける。
「そうね、やりたい事って漠然とはあっても、なかなかこれだっていう決め手を作るのは難しいものね」

先生が頷いた。

「でもあなたはわからないなりに、どの道を選んでも進めるように、学力を落とさず頑張ってるわ。
だから、まだ大丈夫。
夏休みの間、ゆっくり考えてみて」
「…はい」

「…すみません」
亮二のくぐもった声がした。

「恥ずかしながら僕は今日、初めて彼女の進路について触れました」
右隣をみると、亮二が小さく俯いていた。
「いつも本当にイイコで、しっかりしているからと甘えて何も気付けなかった。
…ごめんな」






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