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泥に咲く蓮
第3章 色づき、膨らみ
「…美味い」
鰯を一口食べて、亮二が驚いたように目を見開いた。
ダイニングテーブルには料理が並び、梨花と亮二が向かい合って座っている。

「リョウくん、本当は鰯が苦手なんでしょう」
「…バレてたか」
亮二はやっと観念したようだった。

「でも、本当に美味い。初めて食べたよ、こんな料理があるんだな」
どうやら嘘ではないらしい。あっという間に食が進み、皿が空いていく。

「おかあさんがあんまり魚が好きじゃなかったから、魚レシピにはけっこう自信があるかも。
食べてもらいたくて、子供なりに試行錯誤してたんだ」

翔子は漁業が盛んな地方の出身だったらしいが、好んで魚を食べなかった。
特に青魚が苦手だと言っていた。
梨花には好き嫌いがない。
小学校高学年にあがる頃には梨花が料理の担当になり、食卓は一気に華やいだ。
レシピを考案するたび、母は、苦手だったものが美味しいと喜んで食べてくれたのだった。

「そうか…」
亮二がふと、笑った。
母を思い出したのだろう、その笑顔はとても優しい。

「俺にはそんな一面、あんまりみせてくれなかったな。
いつも気丈に、背中を押してくれてたんだ」

「そうなんだ…」

梨花の胸が痛む。

いつしか自分の気持ちに気付いた時から、亮二との会話はなるべく母が関係しない事柄ばかりを選んでいた。
話したがらない梨花への気遣いからか、亮二も翔子との話題を避けるようになった。

まさかそこに、梨花の邪な想いがあるとは露ほどにも思っていないだろう。
居心地がよくて忘れがちだが、彼は母の恋人なのだ。

「リカちゃん、俺は翔子さんにそうしてもらった分、君にきちんと返していきたい」
亮二が箸を置いて、まっすぐに梨花を見つめた。

「さっきの面談での続きを話していいかい?」
梨花は黙って頷いた。

「何かやりたい事があるなら専門学校、後は短大に大学、大学院まで道は幅広くある。
どんな進路を選ぶとしても、絶対に応援する。
あと、費用の事だけは本当に心配しないでくれ」
「…」
「こういう大事なこと、もっと早く話しておくべきだったと反省してる。
君はもう高校三年生なんだよな」

「…この前十八才になったわ」
「そうだよな。…綺麗になったもんな」
ふっと亮二の表情が和らぐ。


















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