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泥に咲く蓮
第3章 色づき、膨らみ
右手の中指が第二関節辺りまで埋まった。
飲み込んだ指を押し潰すかのように温かい圧力がかかる。

「うっ…ん、ぁ…」

思ったより痛みはない。
しばらく動かさずにいると、違和感が薄れてきた。

パズルのピースがはまったみたいだ。
欲情し過ぎて物足りない、渇求に栓をしたみたいな感覚。

「ふっ…う…っ」

ゆっくりと動かしてみる。圧力が凄くて、うまく動かせているかわからない。

(中の感覚って、外よりこんなに鈍感なんだ…)

圧力に加えて、モゾモゾとヴァギナが別の生き物のように蠢く。
まとわりつく肉壁にはヌルヌルとした部分とザラザラした部分があるのがわかった。
温かく、奥へと吸い込まれるような指の感触。

重くて、思ったように指が動かせない。
意思とは別に、締めつけ、蠢きは止まらない。

「あっ…んっ」

そっと指を抜いた。分泌液が指のつけ根まで絡まっている。
陰核に触れている時のような、鋭い快感はなかった。

「はあっ、はあっ…」

大きく息をつく。
さっきまでの、息が苦しいほどの渇求が薄らいでいる…かもしれない。

絶頂まで達していないけれど、少し満たされたような感覚にぐったりと力が抜ける。

急にどっと疲れが出て、梨花はそのまま深く眠ってしまった。



次の日の朝、慌ててシャワーを浴び、ギリギリで教室に滑りこんだ。

「三崎、おはよ」
左手で頬杖をついて、シバは自分の席からニコニコとしている。

「…」

(この人のせいで、みんな誤解しちゃったんじゃない)

梨花は黙って自分の席に着いた。

「えぇ…シバくんを無視するなんてヒドイ」

どこからか、小さく女子の声がした。
声の方をみると、三人ほどの女子グループが眉をひそめてこちらをみていた。

「わかった風な事を言わないで」

梨花が言った時、チャイムが鳴った。


(まいったなぁ…これじゃ完全にアウェーだわ)

いつもの屋上で野菜サンドを頬張って、梨花は小さくため息をついた。
三者面談が始まり、次に期末試験を控えている。
夏休みまでもう午後からの授業はない。
だが梨花は図書室で勉強がしたくて、ランチボックスを持参していた。

野菜サンドは昨日のサラダをパンに挟んだものだが、さっぱりとして美味しい。
空はカラッと晴れて、影になっているこの場所は居心地がよかった。

「三崎、みーっけ」





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