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泥に咲く蓮
第1章 夏の蕾
梨花の住む家は最寄り駅から徒歩十五分圏内にある。
予感が的中し、半分ほど歩いた地点で夕立が降ってきた。

大粒の雨は勢いよく地面を叩きつけ、傘を持たずに歩いていた人達が小さな悲鳴をあげる。
梨花も例外ではない。
雨粒が容赦なく髪に、肌に降り注ぎ、あっという間に全身ずぶ濡れになってしまった。

これだけ濡れれば走っても意味はないなと思ったが、公園を抜け、白い15階建てのマンションが見えると勢いよく駆け込んだ。
この802号室が梨花の暮らす家である。

髪を伝う滴をハンカチで絞りながら鍵を開け、玄関で靴下を脱ぐ。
上がってすぐ右手に洗濯機が置かれた脱衣所があり、続いて浴室がある。
ランドリーボックスに、びっしょり濡れたハンカチと靴下を投げ込んだ。

バスルームから廊下を挟んだ向かい側に梨花の部屋がある。
みると、廊下一番奥の磨りガラスのドアの向こう、リビングの明かりが点いていることに気づいた。
自室に鞄を置き、裸足のまま、そっとリビングのドアをあけた。

「リョウくん、いたんだ。ただいま」
「お疲れさん。来る前に電話したんだけどな」

うっすらコーヒーと、煙草の匂い。
ソファの背中の向こうで姿が見えないが、低く響く声がした。
母の恋人の、鳥居亮二だ。
厳密に言えば恋人だった。母は、梨花が中学一年生の冬に他界している。

「そこの公園で折り返しを待ってたけど、夕立に降られて勝手に入った。悪い」
コーヒーのお代わりでも淹れるのか、マグカップを片手に亮二が立ち上がりこちらを振り返った。

背はそこそこの高さだが広めの肩、爽やかで人の良さそうな顔立ちは彼の実年齢よりずっと若くみえる。

「ここ、リョウくんの家だよ。帰るのに連絡なんかいらないよ」
「いや、駄目だろ。リカちゃんのプライバシーがあるだろ」

亮二は絵描きである。
近所にアトリエを持ち、普段はそこにいる事がほとんどだ。

「それよりびしょ濡れじゃないか。すぐに風呂に入ってきな」
亮二が視線を外しながら窘めた。

濡れて張りついた制服のシャツがバストラインを浮き立たせ、透けている。
冷えた肌や素足が血色をなくし、白く光っていた。

「寒っ…」
「シャワーだけじゃなくてちゃんとお湯に浸かって温まれ」
「はーい。リョウくんの過保護は変わらないね」

梨花は笑って、浴室へ向かった。











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