この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
泥に咲く蓮
第3章 色づき、膨らみ
「あんたさ、いい匂いすんの。
シャンプーとか柔軟剤とか、そんなんじゃないの」
「…」
「そんな匂いしてる女子いねぇからな。
いいなって思ってた」
シバはいつの間にか真面目な顔をしていた。
「…ごめんなさい。わたし、好きな人がいるの」
「知ってる」
後ろ手を付いていた手を離して、少し前傾姿勢であぐらをかいた脚に肘を乗せると、梨花が持っていたレモンティーを拐った。
「それ、前にも聞いたし、誰かも想像つく」
蓋をあけて、一口、二口と飲んでいる。
「…昨日学校にきてた保護者なんじゃねぇの?」
かああっと顔が赤くなる。
(なんでシバくんが知ってるの…?)
「やっぱりな」
梨花の反応をみて、シバは鼻で笑った。
「オレの面談、三崎の前の前だったんだよね。
で、後が三井でさ」
ミツイくんはシバくんとよく一緒にいる人だ。
「アイツが終わるのをエントランスで待ってたら、あんたが門まで出てきてさ。
兄貴なのかと思ったけど、一緒に歩いてるとこ見てたらあれ?って思った」
「…わたしに兄弟はいないわ」
「だよなぁ、全然似てなかったな」
見られていた事に、全然気づいていなかった。
梨花は愕然としていた。
「兄貴じゃないなら、なんであの人が保護者なわけ?」
「………」
「まあ、いいや。
誰だろうと関係ないし。
三崎がいくら好きでもダメな人に違いはないんだろ?」
シバが空になったレモンティーの蓋を閉めた。
「そういや、オレ達が一緒に帰ってたの、先生が見てたらしいぞ。
珍しいなって、友達なのかって訊かれたよ」
「それ、何て答えたの?吉田先生が…」
「付き合ってますって言った」
「そんな嘘を…」
不意に隣にいるシバの顔が目の前に近づいた。
梨花の口唇にそっとくちづける。
甘いレモンの香料が鼻を掠めた。
「…」
「…こんなにこっち向かせたいの初めてだ」
シバは、驚いて動けない梨花に、ニカッと笑ってペットボトルを持ったまま立ち上がった。
「じゃあまたな、オレ帰るわ」
「…なんてことするのよ!」
身軽にフェンスを乗り越えて、さっさとシバは行ってしまった。
梨花はしばらく茫然自失になっていた。
シャンプーとか柔軟剤とか、そんなんじゃないの」
「…」
「そんな匂いしてる女子いねぇからな。
いいなって思ってた」
シバはいつの間にか真面目な顔をしていた。
「…ごめんなさい。わたし、好きな人がいるの」
「知ってる」
後ろ手を付いていた手を離して、少し前傾姿勢であぐらをかいた脚に肘を乗せると、梨花が持っていたレモンティーを拐った。
「それ、前にも聞いたし、誰かも想像つく」
蓋をあけて、一口、二口と飲んでいる。
「…昨日学校にきてた保護者なんじゃねぇの?」
かああっと顔が赤くなる。
(なんでシバくんが知ってるの…?)
「やっぱりな」
梨花の反応をみて、シバは鼻で笑った。
「オレの面談、三崎の前の前だったんだよね。
で、後が三井でさ」
ミツイくんはシバくんとよく一緒にいる人だ。
「アイツが終わるのをエントランスで待ってたら、あんたが門まで出てきてさ。
兄貴なのかと思ったけど、一緒に歩いてるとこ見てたらあれ?って思った」
「…わたしに兄弟はいないわ」
「だよなぁ、全然似てなかったな」
見られていた事に、全然気づいていなかった。
梨花は愕然としていた。
「兄貴じゃないなら、なんであの人が保護者なわけ?」
「………」
「まあ、いいや。
誰だろうと関係ないし。
三崎がいくら好きでもダメな人に違いはないんだろ?」
シバが空になったレモンティーの蓋を閉めた。
「そういや、オレ達が一緒に帰ってたの、先生が見てたらしいぞ。
珍しいなって、友達なのかって訊かれたよ」
「それ、何て答えたの?吉田先生が…」
「付き合ってますって言った」
「そんな嘘を…」
不意に隣にいるシバの顔が目の前に近づいた。
梨花の口唇にそっとくちづける。
甘いレモンの香料が鼻を掠めた。
「…」
「…こんなにこっち向かせたいの初めてだ」
シバは、驚いて動けない梨花に、ニカッと笑ってペットボトルを持ったまま立ち上がった。
「じゃあまたな、オレ帰るわ」
「…なんてことするのよ!」
身軽にフェンスを乗り越えて、さっさとシバは行ってしまった。
梨花はしばらく茫然自失になっていた。