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泥に咲く蓮
第4章 膨らみ、開花
亮二をみると、変わらずぐっすりと眠っている。
ほっとして、そっと指で亮二の口唇に触れた。
夏休み前に、学校の屋上でシバにくちづけられた瞬間が頭をよぎる。
ファーストキスだった。
(あれはただの事故、
あんなのはキスにはカウントしない)
そう思っていても、やはり悲しかった。
ずっと忘れたふりをしていた。
梨花がキスしたい相手は一人しかいない。
そして今、こうして目の前にいるのだ。
衝動が頭をもたげる。
(ダメ、熱で寝ているのに…
それに気づかれたらどうするの?)
それでも、機会はもう今しかないと思った。
こんな無防備な亮二は、もうきっと見ることはできないだろう。
たまらなくなって、梨花は亮二にそっと口唇を重ねた。
体温が高いせいか熱く、柔らかい。
亮二の匂いに包まれて、また頭がクラクラする。
高揚感は束の間、一瞬でそれは苦いほどの切なさに変わった。
「…」
目頭が熱くなる。
目を閉じたまま、涙が溢れた。
重なって下にいる亮二に落ちてしまったかもしれない。
梨花は慌てて亮二から離れた。
音を立てないようにそっとアトリエを後にする。
(もうこれ以上、あの人には触れられない…)
歩きながら、梨花の涙は止まらなかった。
煙草に口づけて想像していたより、本物のキスはずっとずっと苦かった。
こんなに苦しくなるなら、キスなんてするんじゃなかった…。
次の日、梨花は佳奈一家が住むマンションにいた。
優香の夏休みの課題を手伝っている。
夕方になって暑さが和らぎ、涼しい風が子供部屋の窓の風鈴をチリン、と揺らした。
「リカお姉ちゃん、ちょっと休憩しようよー」
「優香ちゃん、さっきもそう言って休憩したよ」
「いいのいいの、アイス食べよう」
言うが早いか、優香は机を離れて冷蔵庫からアイスバーを二本取り出してきた。
「じゃあ、いただきます」
「いただきまーす」
佳奈は仕事、愛美はクラブ活動でいない。
優香は嬉しそうだ。
「愛美姉ちゃん、最近カレシできたんだって」
イチゴのアイスを頬張りながら優香が事も無げに言った。
なるほど、電話口で愛美が相談したいと言ってたのはその事なのだろう。
「…優香ちゃん、彼氏って意味わかるの?」
「わかるよー」
優香はアイスに口唇を尖らせてチュッ、とする。
「こうする人でしょ!」
ほっとして、そっと指で亮二の口唇に触れた。
夏休み前に、学校の屋上でシバにくちづけられた瞬間が頭をよぎる。
ファーストキスだった。
(あれはただの事故、
あんなのはキスにはカウントしない)
そう思っていても、やはり悲しかった。
ずっと忘れたふりをしていた。
梨花がキスしたい相手は一人しかいない。
そして今、こうして目の前にいるのだ。
衝動が頭をもたげる。
(ダメ、熱で寝ているのに…
それに気づかれたらどうするの?)
それでも、機会はもう今しかないと思った。
こんな無防備な亮二は、もうきっと見ることはできないだろう。
たまらなくなって、梨花は亮二にそっと口唇を重ねた。
体温が高いせいか熱く、柔らかい。
亮二の匂いに包まれて、また頭がクラクラする。
高揚感は束の間、一瞬でそれは苦いほどの切なさに変わった。
「…」
目頭が熱くなる。
目を閉じたまま、涙が溢れた。
重なって下にいる亮二に落ちてしまったかもしれない。
梨花は慌てて亮二から離れた。
音を立てないようにそっとアトリエを後にする。
(もうこれ以上、あの人には触れられない…)
歩きながら、梨花の涙は止まらなかった。
煙草に口づけて想像していたより、本物のキスはずっとずっと苦かった。
こんなに苦しくなるなら、キスなんてするんじゃなかった…。
次の日、梨花は佳奈一家が住むマンションにいた。
優香の夏休みの課題を手伝っている。
夕方になって暑さが和らぎ、涼しい風が子供部屋の窓の風鈴をチリン、と揺らした。
「リカお姉ちゃん、ちょっと休憩しようよー」
「優香ちゃん、さっきもそう言って休憩したよ」
「いいのいいの、アイス食べよう」
言うが早いか、優香は机を離れて冷蔵庫からアイスバーを二本取り出してきた。
「じゃあ、いただきます」
「いただきまーす」
佳奈は仕事、愛美はクラブ活動でいない。
優香は嬉しそうだ。
「愛美姉ちゃん、最近カレシできたんだって」
イチゴのアイスを頬張りながら優香が事も無げに言った。
なるほど、電話口で愛美が相談したいと言ってたのはその事なのだろう。
「…優香ちゃん、彼氏って意味わかるの?」
「わかるよー」
優香はアイスに口唇を尖らせてチュッ、とする。
「こうする人でしょ!」