この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
泥に咲く蓮
第4章 膨らみ、開花
いろんな年齢の、いろんな個性を持った子供達との生活は亮二には悪くなかったらしい。
友達のような、兄弟のような感覚だったと言った。
「でも、やっぱり中には親と暮らせない事に寂しがる子供もいるんだよな。
当たり前っちゃ当たり前だけど」
自分の家があり、親子で暮らしている子供達とは相容れなかったのだろう。
施設近くの川辺は地元の子供達が遊ぶ人気スポットで、そこで対立が起きていたという。
「翔子さんは昔から、気っ風がよかったんだ。
私達は何も違わない、とか言って施設育ちの子供達にケンカを仕掛けられても全然負けなかったんだよ。
しかも、年下の俺達にはとっても優しくてね」
葬儀で、親族達が言ってたのはこれか。
想像に難くなかった。
母は、子供時代から何も変わっていなかったんだ…
「いつしか、子供達が分け隔てなく仲良く遊ぶ事も増えたんだよ。
水着事件の時も、カエル事件の時もそう。
スケッチしてた俺の絵を誉めてくれて、この道を目指そうと思ったのも翔子さんのおかげだったんだ」
ああ、やっぱり母には敵わないな、と思った。
母の、明るく優しい笑顔が目に浮かぶ。
八重歯が可愛い、丸い大きな目。
日焼けしたようなこんがりした肌、ふわふわの癖毛の長い髪。
今までずっと、きっとこれからも、亮二の心を掴んで離さないに違いない。
「おかあさんは、わたしの自慢の母だったわ」
梨花はにっこり微笑んで、紅茶が入ったカップを手に取った。
「たくさん話してくれて、ありがとう」
店を出ると、もう二十一時をまわっていた。
繁華街を抜け、駅までの道で、不意に誰かに肩を叩かれた。
「三崎じゃん。何してんの、こんなとこで」
シバだった。
「…っあなたこそ何してるの?」
「バイトだった」
私服姿のシバは制服の時より、ずっとあか抜けて見えた。
多分、声をかけられなかったら絶対に気づかないだろう。
「リカちゃん、友達?」
亮二の声で我にかえった。
「オレ、芝って言います。三崎…サンと、同じクラスです」
「あ、君が」
亮二の顔が笑顔になった。
「噂の、リカちゃんの彼氏だな」
「えっ」
「違うの!」
「面談で吉田先生から伺ったよ。よろしくね、シバくん」
「…はい…」
シバは調子が狂ったような返事をしている。
梨花はもう何も言えなかった。
友達のような、兄弟のような感覚だったと言った。
「でも、やっぱり中には親と暮らせない事に寂しがる子供もいるんだよな。
当たり前っちゃ当たり前だけど」
自分の家があり、親子で暮らしている子供達とは相容れなかったのだろう。
施設近くの川辺は地元の子供達が遊ぶ人気スポットで、そこで対立が起きていたという。
「翔子さんは昔から、気っ風がよかったんだ。
私達は何も違わない、とか言って施設育ちの子供達にケンカを仕掛けられても全然負けなかったんだよ。
しかも、年下の俺達にはとっても優しくてね」
葬儀で、親族達が言ってたのはこれか。
想像に難くなかった。
母は、子供時代から何も変わっていなかったんだ…
「いつしか、子供達が分け隔てなく仲良く遊ぶ事も増えたんだよ。
水着事件の時も、カエル事件の時もそう。
スケッチしてた俺の絵を誉めてくれて、この道を目指そうと思ったのも翔子さんのおかげだったんだ」
ああ、やっぱり母には敵わないな、と思った。
母の、明るく優しい笑顔が目に浮かぶ。
八重歯が可愛い、丸い大きな目。
日焼けしたようなこんがりした肌、ふわふわの癖毛の長い髪。
今までずっと、きっとこれからも、亮二の心を掴んで離さないに違いない。
「おかあさんは、わたしの自慢の母だったわ」
梨花はにっこり微笑んで、紅茶が入ったカップを手に取った。
「たくさん話してくれて、ありがとう」
店を出ると、もう二十一時をまわっていた。
繁華街を抜け、駅までの道で、不意に誰かに肩を叩かれた。
「三崎じゃん。何してんの、こんなとこで」
シバだった。
「…っあなたこそ何してるの?」
「バイトだった」
私服姿のシバは制服の時より、ずっとあか抜けて見えた。
多分、声をかけられなかったら絶対に気づかないだろう。
「リカちゃん、友達?」
亮二の声で我にかえった。
「オレ、芝って言います。三崎…サンと、同じクラスです」
「あ、君が」
亮二の顔が笑顔になった。
「噂の、リカちゃんの彼氏だな」
「えっ」
「違うの!」
「面談で吉田先生から伺ったよ。よろしくね、シバくん」
「…はい…」
シバは調子が狂ったような返事をしている。
梨花はもう何も言えなかった。