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泥に咲く蓮
第4章 膨らみ、開花
「先に駅で待ってるから、ゆっくり話しておいで」
そう言って亮二は、一人で駅の方へ向かう。
「待って…」
「三崎」
追いかけようとした梨花を、シバがひき止めた。
「オレ、ずっと大事な事忘れてたんだよね」
「…何よ?」
「あんたの携帯番号知らねぇ」
ゴソゴソとポケットから自分の携帯を取り出している。
なんであなたに教えなきゃなんないの…と言いかけたが、思い直した。
梨花もハンドバッグから携帯を取り出した。
「ちょっと貸してみ」
シバが素早く拐い、梨花の携帯に何か打ち込んだ。
しばらくしてシバの携帯が鳴った。
「手慣れてるわね…」
「まーね。
これでいつでも三崎に連絡できるな、
…ていうかさ」
シバがまじまじと梨花を見つめる。
「あんた、制服じゃなかったら雰囲気変わるな。
ビックリした」
「それはお互い様でしょ」
梨花は携帯をハンドバッグに直しながら言った。
「じゃあ、わたし、もう行くわ」
言うなり駆け出した梨花に、
「駅の場所わかるかー?」とシバの声が背中から聞こえた。
何も答えずに夢中で走る。
まだ追いかけたら、
探したら見つかるかもしれない。
人並みを掻き分けて、梨花は亮二の背中を探して走った。
改札口がみえてきた、というところで亮二を見つけた。
追いつき、はあはあと肩で息をしている梨花に亮二は目を丸くした。
「えっ、…もしかして走ってきたの?」
「…」
声にならない。息が続かない。
「…とりあえずこれ、飲みな」
亮二が道すがら買ったのだろう、半分ほど空いたペットボトルのミネラルウォーターを差し出した。
「…」
無言で飲んだ。
全部無くなるまで飲んだ。
「…急いで来なくても、待ってたのに」
「わたしが嫌だったの」
涙目になるのを誤魔化しながら、梨花はペットボトルの蓋を閉めた。
「わたしがリョウくんを待たせるのが嫌だったの」
「…そっか」
亮二がふっと微笑んだ。
帰り道、二人の間にはいつもより言葉がなかった。
やるせない夜はそのまま、亮二は梨花をマンションまで送り、自身はアトリエへと戻って行ったのだった。
そう言って亮二は、一人で駅の方へ向かう。
「待って…」
「三崎」
追いかけようとした梨花を、シバがひき止めた。
「オレ、ずっと大事な事忘れてたんだよね」
「…何よ?」
「あんたの携帯番号知らねぇ」
ゴソゴソとポケットから自分の携帯を取り出している。
なんであなたに教えなきゃなんないの…と言いかけたが、思い直した。
梨花もハンドバッグから携帯を取り出した。
「ちょっと貸してみ」
シバが素早く拐い、梨花の携帯に何か打ち込んだ。
しばらくしてシバの携帯が鳴った。
「手慣れてるわね…」
「まーね。
これでいつでも三崎に連絡できるな、
…ていうかさ」
シバがまじまじと梨花を見つめる。
「あんた、制服じゃなかったら雰囲気変わるな。
ビックリした」
「それはお互い様でしょ」
梨花は携帯をハンドバッグに直しながら言った。
「じゃあ、わたし、もう行くわ」
言うなり駆け出した梨花に、
「駅の場所わかるかー?」とシバの声が背中から聞こえた。
何も答えずに夢中で走る。
まだ追いかけたら、
探したら見つかるかもしれない。
人並みを掻き分けて、梨花は亮二の背中を探して走った。
改札口がみえてきた、というところで亮二を見つけた。
追いつき、はあはあと肩で息をしている梨花に亮二は目を丸くした。
「えっ、…もしかして走ってきたの?」
「…」
声にならない。息が続かない。
「…とりあえずこれ、飲みな」
亮二が道すがら買ったのだろう、半分ほど空いたペットボトルのミネラルウォーターを差し出した。
「…」
無言で飲んだ。
全部無くなるまで飲んだ。
「…急いで来なくても、待ってたのに」
「わたしが嫌だったの」
涙目になるのを誤魔化しながら、梨花はペットボトルの蓋を閉めた。
「わたしがリョウくんを待たせるのが嫌だったの」
「…そっか」
亮二がふっと微笑んだ。
帰り道、二人の間にはいつもより言葉がなかった。
やるせない夜はそのまま、亮二は梨花をマンションまで送り、自身はアトリエへと戻って行ったのだった。