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泥に咲く蓮
第4章 膨らみ、開花
シバとファミレスにいる間、何度かチラチラと視線を感じる事があった。
電車に乗り、最寄り駅からマンションまでこうして歩いていても、やはり気のせいではない。
「…やっぱりシバくん、目立つんだね」
「…あー、分かる?
だからさ、オレ、実は進路…」
「あ、ごめんちょっと待って」
ハンドバッグで携帯が振動した気がした。
取り出してみると、亮二から着信通知とメールが入っている。
『イタリアンのオーナーから良いチーズを貰った、お裾分けに行くよ。
また連絡ください』
メールは二時間前に入っていた。
梨花の胸がぎゅっと締めつけられる。
アトリエに行こうかと思った、
その時、
「お、リカちゃん、おかえり」
亮二が前から歩いてきた。
「…リョウくん」
「連絡待ってたんだけど返ってこなかったから、出掛けてるんだろうなと思って。
いないならいいかと、チーズだけ冷蔵庫に入れておいた」
「…こんばんは」
シバが挨拶する。
「おー、こんばんは。
送ってくれたのか」
亮二がにっこり笑って返した。
「じゃあ三崎、オレ帰るわ」
シバが軽く会釈してから、駅の方へ歩いていく。
「シバくん、ありがとうね」
梨花が声をかけると振り返って、小さく手を振った。
「前も思ったけど、彼、モデルなのか?」
ほー、と亮二が感心したようにシバを見ている。
ぎゅっと胸が締めつけられたまま、梨花は笑った。
「…今アトリエに行こうとしてた」
「いや、用は済んだからもう大丈夫だよ。
マンションまで送る」
「…うん」
何も話せず公園を抜けて、マンションまで並んで歩く。
「じゃあ、おやすみ。早く寝ろよ」
「…待って!」
エントランスまで送り届けて、そのまま帰ろうとする亮二をつい引き止めてしまった。
こんな事、初めてだ。
顔をあげられない。
バクバクと心臓が激しく脈うつ。
「…コーヒー、飲んで行って…」
「…」
断られたらどうしよう、どうしよう。
ぐるぐると目の前がぼやけるような感じがする。
お願い、何か言ってほしい…
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
少しの沈黙の後、亮二が答えた。
その瞬間、肩の力が一気に抜けた気がした。
電車に乗り、最寄り駅からマンションまでこうして歩いていても、やはり気のせいではない。
「…やっぱりシバくん、目立つんだね」
「…あー、分かる?
だからさ、オレ、実は進路…」
「あ、ごめんちょっと待って」
ハンドバッグで携帯が振動した気がした。
取り出してみると、亮二から着信通知とメールが入っている。
『イタリアンのオーナーから良いチーズを貰った、お裾分けに行くよ。
また連絡ください』
メールは二時間前に入っていた。
梨花の胸がぎゅっと締めつけられる。
アトリエに行こうかと思った、
その時、
「お、リカちゃん、おかえり」
亮二が前から歩いてきた。
「…リョウくん」
「連絡待ってたんだけど返ってこなかったから、出掛けてるんだろうなと思って。
いないならいいかと、チーズだけ冷蔵庫に入れておいた」
「…こんばんは」
シバが挨拶する。
「おー、こんばんは。
送ってくれたのか」
亮二がにっこり笑って返した。
「じゃあ三崎、オレ帰るわ」
シバが軽く会釈してから、駅の方へ歩いていく。
「シバくん、ありがとうね」
梨花が声をかけると振り返って、小さく手を振った。
「前も思ったけど、彼、モデルなのか?」
ほー、と亮二が感心したようにシバを見ている。
ぎゅっと胸が締めつけられたまま、梨花は笑った。
「…今アトリエに行こうとしてた」
「いや、用は済んだからもう大丈夫だよ。
マンションまで送る」
「…うん」
何も話せず公園を抜けて、マンションまで並んで歩く。
「じゃあ、おやすみ。早く寝ろよ」
「…待って!」
エントランスまで送り届けて、そのまま帰ろうとする亮二をつい引き止めてしまった。
こんな事、初めてだ。
顔をあげられない。
バクバクと心臓が激しく脈うつ。
「…コーヒー、飲んで行って…」
「…」
断られたらどうしよう、どうしよう。
ぐるぐると目の前がぼやけるような感じがする。
お願い、何か言ってほしい…
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
少しの沈黙の後、亮二が答えた。
その瞬間、肩の力が一気に抜けた気がした。