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泥に咲く蓮
第4章 膨らみ、開花
引き止めてしまったものの、明確な理由はない。
梨花は黙ってキッチンでコーヒーを淹れていた。
亮二はソファに座っている。
口火を切ったのは亮二だった。
「…佳奈さんのとこには行ってるのか?」
「…うん。今日も行ってた。
愛美ちゃんと勉強したわ」
コーヒーが入ったマグカップを亮二の前、ガラス製のローテーブルにそっと置いた。
「ありがとう」
梨花もコーナーのカウチソファに座る。
「…」
「…」
ちらっと亮二を見上げると、目が合ってしまった。
つい、逸らしてしまう。
ふっ、と亮二が笑った。
「リカちゃんからこうして誘われたのは初めてだな」
「…うん」
「…どうした、進路の事か?」
まさか、あなたが悩みの種です、なんて言えない。
「保護者なんて名目はあっても、今まで放ったらかしだったからな」
違う、全然違う。
最初から、わたしの方から距離をあけてたの。
「もっとちゃんと、家族らしくしてればよかったな」
……。
頭が真っ白になった。
「わたしの家族はもういないって言ったじゃない」
言い終わらないうちに、梨花は亮二の座っているソファの前に立った。
もう、全部真っ白に壊れたらいい。
片膝をソファにつけて、亮二にのし掛かる。
胸ぐらを掴むように、両手で亮二のシャツを握った。
バランスを崩して、亮二が咄嗟に後ろ手をつく。
亮二の膝上に跨がったまま、梨花は驚いた顔の彼を見下ろした。
「…リョウくん、抱いて」
「……」
「イイコじゃなくてごめんなさい」
「……自分で何を言ってるかわかってる?」
「わかってる」
「……」
好きだとは言わなかった。
「……」
亮二は何も言わない。
馬乗りになった梨花をずっと見上げている。
探るように、どこか少し悲しそうに見つめている。
「わたしの事、もう嫌いになっていい。…お願い」
梨花も目を逸らさない。
「……本気で言ってるのか?」
「本気だよ」
後ろ手に付いていた手を離して亮二は上体を起こし、
体勢を直すともう一度梨花の瞳を見つめた。
「リョウくんがずっと欲しかった」
少し考えた後亮二は、両手でそっと梨花の顔を包んだ。
親指で頬をそっと撫で、見つめる。
それから右腕を梨花の腰に廻して引き寄せると、左手は梨花の頬を包んだまま、キスをした。
梨花は黙ってキッチンでコーヒーを淹れていた。
亮二はソファに座っている。
口火を切ったのは亮二だった。
「…佳奈さんのとこには行ってるのか?」
「…うん。今日も行ってた。
愛美ちゃんと勉強したわ」
コーヒーが入ったマグカップを亮二の前、ガラス製のローテーブルにそっと置いた。
「ありがとう」
梨花もコーナーのカウチソファに座る。
「…」
「…」
ちらっと亮二を見上げると、目が合ってしまった。
つい、逸らしてしまう。
ふっ、と亮二が笑った。
「リカちゃんからこうして誘われたのは初めてだな」
「…うん」
「…どうした、進路の事か?」
まさか、あなたが悩みの種です、なんて言えない。
「保護者なんて名目はあっても、今まで放ったらかしだったからな」
違う、全然違う。
最初から、わたしの方から距離をあけてたの。
「もっとちゃんと、家族らしくしてればよかったな」
……。
頭が真っ白になった。
「わたしの家族はもういないって言ったじゃない」
言い終わらないうちに、梨花は亮二の座っているソファの前に立った。
もう、全部真っ白に壊れたらいい。
片膝をソファにつけて、亮二にのし掛かる。
胸ぐらを掴むように、両手で亮二のシャツを握った。
バランスを崩して、亮二が咄嗟に後ろ手をつく。
亮二の膝上に跨がったまま、梨花は驚いた顔の彼を見下ろした。
「…リョウくん、抱いて」
「……」
「イイコじゃなくてごめんなさい」
「……自分で何を言ってるかわかってる?」
「わかってる」
「……」
好きだとは言わなかった。
「……」
亮二は何も言わない。
馬乗りになった梨花をずっと見上げている。
探るように、どこか少し悲しそうに見つめている。
「わたしの事、もう嫌いになっていい。…お願い」
梨花も目を逸らさない。
「……本気で言ってるのか?」
「本気だよ」
後ろ手に付いていた手を離して亮二は上体を起こし、
体勢を直すともう一度梨花の瞳を見つめた。
「リョウくんがずっと欲しかった」
少し考えた後亮二は、両手でそっと梨花の顔を包んだ。
親指で頬をそっと撫で、見つめる。
それから右腕を梨花の腰に廻して引き寄せると、左手は梨花の頬を包んだまま、キスをした。