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泥に咲く蓮
第1章 夏の蕾

出来上がったオムライスは所々、ごはんが焦げていた。
「料理の腕があがらん、なぜだ」
と亮二は首を捻っていたが、腕を奮ってくれた料理は何だってありがたく、一緒に食べるとなお美味しい。
洗濯物と食事のお礼を言うと、「俺は洗濯機のボタンを押しただけだ」と笑った。
食後のコーヒーは梨花が淹れた。
「何か困った事とか、足りないものとかは無いか?」
ダイニングテーブルに向かい合って座り、亮二は煙草を燻らせながら、いつものように訊ねる。
「ううん、ないよ」
トン、と小さく灰を落とす亮二の長い人指し指を眺めながら、梨花は首を振る。
「…そうか」
亮二に引き取られたといっても、二人は一緒に暮らしてきたわけではなかった。
最初から彼はアトリエで生活し、梨花は亮二が所有するこのマンションで生活している。
看護師だった翔子には夜勤勤務もあり、梨花は物心がつく頃には何でも一人でできる子供だった。
亮二は正直に、そんな梨花だから保護者になる決心がついたと言った。
子供だからと嘘をつかれたり誤魔化されるより、正直に話してくれたのが嬉しかったのを覚えている。
「あ、思い出した。もうすぐ夏休みが始まるの」
「おお、いいな」
煙草の火を消して、マグカップに手を伸ばす。
物音をたてないゆったりとした所作が、大人の男性だな…といつも思う。
「それで、その前に三者面談があるの。近いうち、学校に来てもらわなきゃいけないと思う。…忙しい?」
亮二の表情が明るくなった。
「もちろん行くよ、必ず。いつだっていいから」
「じゃあ、候補日程はまたメールで相談するね」
「うん、待ってる」
「ありがとう。おねがいします」
梨花は小さく頭を下げた。
「頼ってくれて嬉しいんだ。こちらこそありがとう」
嬉しそうな亮二の顔が直視できなくて、梨花は慌ててカフェオレが入った自分のマグカップを手に取った。
(そんな顔、誰にでもみせてるのかな…)
カフェオレを飲みながらモヤモヤする気持ちを誤魔化して、梨花もにっこり笑ってみせた。
「料理の腕があがらん、なぜだ」
と亮二は首を捻っていたが、腕を奮ってくれた料理は何だってありがたく、一緒に食べるとなお美味しい。
洗濯物と食事のお礼を言うと、「俺は洗濯機のボタンを押しただけだ」と笑った。
食後のコーヒーは梨花が淹れた。
「何か困った事とか、足りないものとかは無いか?」
ダイニングテーブルに向かい合って座り、亮二は煙草を燻らせながら、いつものように訊ねる。
「ううん、ないよ」
トン、と小さく灰を落とす亮二の長い人指し指を眺めながら、梨花は首を振る。
「…そうか」
亮二に引き取られたといっても、二人は一緒に暮らしてきたわけではなかった。
最初から彼はアトリエで生活し、梨花は亮二が所有するこのマンションで生活している。
看護師だった翔子には夜勤勤務もあり、梨花は物心がつく頃には何でも一人でできる子供だった。
亮二は正直に、そんな梨花だから保護者になる決心がついたと言った。
子供だからと嘘をつかれたり誤魔化されるより、正直に話してくれたのが嬉しかったのを覚えている。
「あ、思い出した。もうすぐ夏休みが始まるの」
「おお、いいな」
煙草の火を消して、マグカップに手を伸ばす。
物音をたてないゆったりとした所作が、大人の男性だな…といつも思う。
「それで、その前に三者面談があるの。近いうち、学校に来てもらわなきゃいけないと思う。…忙しい?」
亮二の表情が明るくなった。
「もちろん行くよ、必ず。いつだっていいから」
「じゃあ、候補日程はまたメールで相談するね」
「うん、待ってる」
「ありがとう。おねがいします」
梨花は小さく頭を下げた。
「頼ってくれて嬉しいんだ。こちらこそありがとう」
嬉しそうな亮二の顔が直視できなくて、梨花は慌ててカフェオレが入った自分のマグカップを手に取った。
(そんな顔、誰にでもみせてるのかな…)
カフェオレを飲みながらモヤモヤする気持ちを誤魔化して、梨花もにっこり笑ってみせた。

