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純愛不倫
第3章 【第三章】

一軒家は、扉をあけると
一枚板のカウンターがある、おでん屋さんだった。
席は6席。大将が1人でやっているお店のようだ。
斎田「ここはね、俺が散歩していたら見つけた穴場なんだ。大将の好きな時間にやってる幻の店。」
亜美「こういうお店に来るのはじめてです。日本酒が飲めてよかった。」
大将「さっきまで今日釣ったスズキがあったんだけど、全部出しちまった。なににする?」
斎田「ここメニューないから、いつもお任せにしてもらってるんだけど、それでもいいかな?」
亜美「はい!お願いします。」
大将「はいよ。嫌いなものない?」
ないですと答えると、大将はうなずき作業にはいった。
亜美「まだ何も食べてないけど、また来たいです。1人でも来たいな。」
斎田「来たらいいよ。帰りは駅まで歩こう。」
亜美「ありがとうございます。開いててーって念じながら来ないと。」
念じるポーズをしていると、
斎田さんが笑って私を小突いた。
それからも2人で他愛もない話を続けていると、
料理を出し終えたようで、大将が表に出て行った。
大将「のれん下げといたから、ごゆっくり。なんかあったら呼んで。」
斎田「ありがと大将。おでんも上手いし、この小鉢も上手いんだよ。俺が好きだからいつも出してくれるんだ。」
亜美「ありがとうございます。いただきます。」
斎田「あ、大将!ごめん、日本酒だけもらえる?」
そういう斎田さんにあわせて、
わたしも日本酒に切り替えることにした。
今時あまり聞かない、歌謡曲のかかる狭い料理屋さんに2人。
酔いもすすんでたくさんのことを話した。
仕事のこと、プライベートのこと、過去のこと。
翔太のことも、奥さんのことも、話した。
でもお互いすぐにやめた。
忘れていたかった。この時間だけは何も忘れて
独身の恋愛を思い出していたかった。

