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桃衣の天使
第3章 薔薇色の性春
 シャワーで陰毛をしっかり濡らして泡立てたボディーソープを塗りつける。失敗したら悲惨な事になるので慎重に剃刀を進め毛を落としていく。「落とす」これ自体はたいして難しくはない。問題は左右対象だ。あれ?右剃りすぎた?仕方ない左ももう少し、嗚呼!やり過ぎた!また右を。これを繰り返した結果かなり大胆なカットになってしまった。正樹は未だ見たことはないが何度も手で撫でられてるので陰毛の感触は知られている。後悔先に立たず。諦めて脇の下を綺麗に剃り上げる。
 朝の入浴は中学入学当初からの習慣なので親に怪しまれる事はないはずだ。素肌の上にパジャマを着て自室に入る。ドライヤーで髪を乾かすとパジャマを脱いで全裸を全身が入る姿見に映す。おかしな所はないかチェックして買ったばかりの下着を着ける。リボンとレースを使った可愛らしくも大人っぽいデザインを選んだ。少し背伸びが過ぎるかとも思ったが今日大人の女にしてもらうのだ。これくらいの下着は必要だろう。真新しい下着の上から着なれたブラウスと膝丈のスカートを着る。親には「先生が合格祝いに動物園に連れて行ってくれる。19時には帰る」と言ってある。難関校に合格させた先生は両親から信頼も厚い。帰宅時間は守れとだけ言われてあっさりOKが出た。
 八時半に家を出て駅のコインロッカーでワンピースを取り出すとトイレで着替える。脱いだ服を鞄に入れて準備完了だ。
 少し早く出すぎたかな?図書館の手前で時計を見るとまだ九時半過ぎだ。まあ、いいや。遅れていくより数倍ましだし待つのも楽しみよ。私が待ってたら正樹さん慌てるかしら。など他愛ないことを考えながら門扉を潜った足が止まる。
 嘘でしょ。時計を確かめる。間違いないスマホの時計も図書館の大時計も九時四十分にもなってない。なのに図書館の前にはスーツを着込んだ正樹が立っている。
 駆け寄ると正樹はニッコリ笑いかける。
 「麻友美ちゃん早いね。」
 「早いのは正樹さんの方じゃないですか。」
 絵に描いたような恋人の会話を交わして並んで歩きだし大通りでタクシーを拾う。運転手さんに告げられた目的地を聞いて麻友美は驚く。県内で唯一皇族が宿泊出来る格式の高いホテルだ。同じホテルでもレジャーホテルで結ばれると思っていたのに。目をぱちくりさせる麻友美の髪を正樹は優しく撫でる。「僕に全て任せて」と耳打ちされるともう麻友美は夢の中だ。
 
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