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桃衣の天使
第4章 真白な未来
 言い残して母さんを寝室に運びながら頭の中は何とか佐久間秀太氏に好印象を残す手立てはないかとフル回転だ。具体案は出ないが世間一般的に失礼にあたらないようにすれば何とかなるだろう。
 母さんをベッドに投げ捨てると急いで玄関に戻る。よかった、居た居た。
 半ば無理矢理家に連れ込みビールを飲ませてから色々な話をした。
 佐久間秀太。母さんの5つ上の40歳バツイチ独身、子供なし。母さんの取引先の人だそうだ。
 自己紹介が終われば緊張も溶けてアルコールという潤滑剤で舌も滑らかになる。腹の底までは判らないが悪い人間ではなさそうだ。中坊に言われては立つ瀬がないだろうが世渡りは下手だが実直で困ったら周りがすすんで助けてくれるタイプみたいだ。
 楽しい時間は秀太氏が酔いつぶれたので御開になった。夏とはいえ床に転がしたら風邪をひくだろうし母さんの寝室に入れるわけにはいかない。母さんとは違いずっしり重い身体を苦労して運び俺のベッドに寝かせる。
 さてどうしたものか。現在午前1時半。四時間後にはジョギングに出掛けるのだが母さんの恋人とはいえ他人を残して出掛けるのはあまりに物騒だ。それにあれだけ泥酔している母さんが時間に起きて来るとは思えない。
 仕方がない。スマホを手に取り「ジョギング中止。7時40分家に来い。」とメールをメールを送る。すると30秒もしない内にスマホが鳴る。返事早いなと思ったらメールではなく電話だ。慌てて通話ボタンをおす。
 「ご主人様。何かありましたか?」
 繋がると同時に凄い勢いで愛花が話し掛けてくる。何か事件事故に巻き込まれたと思ったらしい。事情を話すとやっと落ち着いてくれたようだ。
 「じゃあ、いつも通りお握りだけは作って行きますね。屋上ででも食べましょ。」
 自殺防止の為に立ち入り禁止にしている学校が多い中我が校は高いフェンスにアーケード半透明の屋根を設え雨天でも安全に運動出来るスペースとして解放している。
 「そうしよう。それにしても未だ勉強してたのか?」
 試験前でもないのに優等生は違うなと感心してると愛花は受話器の向こうでクスクス笑い出す。
 「オナニーしてました。」
 「え?」
 「ご主人様が公園で可愛がってくれないからムズムズして仕方ないから寝る前にオナニーしてました。」
 少し間をおいてクチュクチュという湿った音が届く。
 「聞こえましたか?」
 
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