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第21章 【世界はそれを暴君と呼ぶんだぜ】

「…あのね、未結ね。流星に限らず、男は視覚からの刺激にすごく弱いの。萎えもするし、興奮もするの。…だから、俺が避けてた理由も、分かった…よね?」

さっきとは打って変わって、麗さまの口調はいつも通り諭すような穏やかなもの。だけど… ??いまいち分からない。

「ん~…お二人とも体操服が嫌い…ってことですか?…あっ!じゃあ、わたし今度メイドさんの服着ます!わたし、家政婦ですし」
「!何それすげーいーじゃん!!」

その提案に流星さまは身を乗り出し、目を輝かせた。色は黒だフリルは多め、丈は短め等々、色々注文をつけてくる。分かりやすいなぁ…。
あ、自分で言っておいてなんだけど、どこに売ってるんだろう?

「…そういうことじゃないからね」
「す、すみません…」
「……」

怒って…というよりも、呆れている。片手で顔を覆いながら、麗さまはうなだれた。
萎縮してしまったわたしとは対称的に、流星さまは無反応。こっそり盗み見てみると…手にした携帯の操作に没頭し、自分の世界に入りこんでいる。お仕事の連絡かな?

「…あぁもう、ハッキリ言うね。未結」

顔を上げ眼鏡を直した麗さまは、姿勢を崩し椅子にもたれ、腕組みをしてわたしの方を見た。

「そんな変な格好で家ん中ウロウロされたら俺も理性保てません。だからやめて」
「へっ」

間抜けなわたしの声に、何処でも襲うこいつと同レベルに成り下がりたくない。と。麗さまは流星さまを親指で差しながら言い切った。
…結構な言われようなんだけど、流星さまは相変わらず携帯の操作に夢中で無反応。片手は口元を押さえて目付きは真剣そのもの。余程重要な案件なのかな…!?

「仮に、いつかの玄関みたいな状況になったとするよね。こいつテメーのことなんか棚上げして、間違いなく俺のこと殴るよ」
「……」

情景が目に浮かんでしまった。
…やる。流星さまはきっとやる。

「そしたら俺も殴り返すもん。…嫌でしょ?」
「…あ」

ようやく理解が追い付いた。彼らの間で争い、それこそ殴りあいのような事態が起きれば、怖がるのも悲しむのもわたし。麗さまはそれを避けたいんだ。

「俺も男だからね。人間もできてないし。未結のことが好きだから反応しちゃうし」

だから自衛してたの。と彼がわたしを避けていた理由を話してくれた。

「…わかってくれた?」

いつの間にか涙はすっかり乾いていた。
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