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BeLoved.
第23章 【これからのはなし】

昨夜わたしは勝手な思い込みで、もう一人のご主人様である麗さまを傷つけてしまった。
ろくに謝罪も出来ぬまま彼は何処かへ姿を消し、携帯もずっと不通。車もない。

…もしかしたら帰ってこない?そんな不安さえ頭を過ぎって。どうしよう。考えれば考えるほど深みにはまり、頭も胸もいっぱいになっていた時だった。
背後でリビングのドアの開閉音がした。


「ただいま」

聞き慣れた静かな声。体が固まる。
…麗さまだ。

まさかこんなひょっこり帰ってくるなんて。
用意していたはずの弁解の言葉はみんな飛んでいき、唯一口に出せたのは小声での「おかえりなさい…」だけだった。


「おいボンクラ」

麗さまはわたしの前を素通りし、棘だらけの呼び掛け(と言っていいのか疑問だけど…)と共に流星さまが座るソファの背を蹴った。流星さまは当然険しい表情で麗さまを見上げる。

「うるせーなヘタ麗何か用か」
「テメーに荷物届いてんだよ」

麗さまの手の中には…小脇に抱えられるくらいの段ボール箱。側面には通販会社である密林のロゴマーク。それを目にした流星さまの顔が、パアッと輝いた。本当、瞬時に。

「毎度毎度なにが"村上 流"だよ。配送先に俺んち使うなって言ってんだろ。しかも代引」
「ありがとなー麗!いやー来ねー来ねーと思ってたら俺そっちの住所入れてたのか!よく見てなかったわ!お前ムカつくけど、やっぱいー奴だな!ちょ待ってろ!」

流星さまは荷物を受け(というか奪い)取ると、麗さまの肩をバンバンと叩き意気揚々とリビングを出て行った。さっきまでの自責の念はどこへ?あんなにはしゃぐなんて、一体何を買ったんだろう…

「…ほんと単純でいいな。…痛てー…」
「…あ、だ、大丈夫ですか?」

残された麗さまが呟く。溜息混じりに肩を撫でて。ああ、叩かれたときかなりいい音してたっけ…。怖いのも忘れ、そばに駆け寄って見上げる。その表情は…普段通りのものだった。

「うん、大丈夫。返したから」
「?……あ…」

心配ありがとう、と頭を撫でてくれた手も変わらず優しい。それでも何もなかったことにはできない。いや、しちゃダメだ。

「…あの…わたし…昨夜は…」
「ねえ」

すみませんでした。を遮って。麗さまもまた流星さまに負けず劣らず突拍子のないことを口にした。

「もしかして夕飯、カレー?」
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