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BeLoved.
第23章 【これからのはなし】
「えっ?」
一瞬何を言われたかわからなかった。
確かに今夜の献立はカレーだけど…。
日中は昨夜からの重い気持ちを引きずってしまい、家政婦業が全く捗らなかった。そんな体たらくだから夕食の仕度もいつもの時間に間に合わず、しかも流星さまが予想外に早く帰られたこともあって急遽拵えたのだ。…手抜きだと思われちゃったかな。
気持ちに左右され職務を疎かにするなんて
お金を頂く身として失格だ。…わかってる。
流星さまは責務を全うするために
あんなに悩んでらっしゃるのに…
「ねえ」
「!あ…っ、は…はいっ!そうです!」
我に帰りハッとした。手抜き云々以前に
麗さま、カレーお嫌いじゃなかった…?!
確かお母様が度を越した料理ベタで、その中でも一番酷かったのが、カレー。色はピンクで素材は未だに謎だという…ああそうだわそうよ。彼は泣きながら食べてきたと言っていたのに。どうして失念してしまったの。
駄目な時はとことん駄目な方にいくものなのか。
また余計なことをして、彼の中の嫌な記憶を蒸し返してしまった。…もうお終いだ。わたしは途方に暮れた。
「もう食べられる?」
しかし当の本人は…平静だった。目線は台所のカウンターの先、鍋の方を向いている。…少なくともご機嫌は悪くなさそう。…いや、寧ろ…
「あ…はい。いつでも…」
「貰っていい?」
「…でも…」
「もらっていい?」
普段より表情が明るい気がした。が、語気は強め。…お腹すいてるんだ!自分の直感に恐れ戦きつつ、急いで彼の分を盛り付けたのだった。
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「昨日ごめんね」
皿を受け取った彼が口にした言葉は「いただきます」ではなく…謝罪だった。不快にさせて悪かったと。
謝るべきはわたしなのに。慌ててあげた否定の声を、彼はやんわりと制止する。
「未結も座って」
「……」
少し話そう、と促されて。
戸惑いつつも正面に腰を下ろした。
「初めて会った日も、一緒に飯食ったよね」
「…!たくさん食べて下さいましたよね…っ」
出会った日のこと。覚えていてくれたんだ。
自分で料理したのに何を振る舞ったかは忘れてしまったけど…。嬉しくて、不謹慎かもしれないけど顔は綻び緊張も少し緩んだ。…この時までは。
「あの時から好きだったよ」