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BeLoved.
第24章 【彼が一番食べたかったもの】
シャワーを終えた麗さまは眼鏡を外し、ジーンズこそ履いていたものの上半身は裸という息が止まりそうな出で立ちで台所に現れてくれた。
「お待たせ」
「っひゃ!」
流しに立ちお皿を洗うわたしの背後に立った彼は、腰に手を回し包み込むように抱きついてきた。
腕のしなやかな固さと、肌に寄せられた頬のぬくもりと、甘い石鹸の香り。髪がさらさらと触れるくすぐったさ。伝わってくるその全てに心臓は跳ねた。
「…、あ…」
硬直するわたしから取り上げたスポンジを流しに放り捨て水道も止め。あとはすすぐだけだったお皿はそのままに作業を中断させた彼は、自分が首に巻いていたタオルでわたしの濡れた手を拭ってくれた。
そのまま彼の手がわたしの手を包み込む。女のわたしとは全然違う、骨張った男の人の手。『離さない』その言葉をそのまま現すように、指が絡められた。
「行こう?」
「……」
促されても動けない。返事すらできない。
理由は明確だ。『まだお仕事がある』から。…それと…
今がまだ『おはよう』が通じる時間だからだ。
日中に…いわゆる『そういうこと』をするのは初めてじゃない。でも…いくらなんでも。
しかも今日は平日。大抵は労働に勤しむ頃で…現に流星さまはお仕事の真っ最中。何とも言えない後ろめたさを感じずには居られなかった。
「聞いてる?」
「、っあ…!」
冷静な声の直後、うなじに唇が触れた。
ぞわりとした感覚が駆け抜け、体中が強張ってしまう。
「ん…、…や…ぁ…っ」
それを解きほぐすように、柔らかい唇は肌を啄みながら下っていく。かと思えば今きた箇所を遡って。予想できない不規則な動きと…次に彼から発せられた言葉は、わたしから冷静さを奪うには十分すぎた。
「セックスしよう?未結」
「…っ!」
耳のすぐ側での素直すぎる物言いと…いつかのように、ジーンズ越しでも伝わる存在を主張する彼自身。
「ね?」
「……」
しない。その選択肢は存在しない。
逆らう言葉も理由も見つからない。
いや、そもそも拒否権なんてあったのかな…
繋がれた手を引かれるまま、わたしは彼と台所を後にしたのだった。