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BeLoved.
第25章 【それが彼らだ】
…確かに『お友達』ではなかった。
しばしの沈黙のあと、麗さまは「あ、思い出した」と呟き不快感を更に露わにする。対する彼女は握りしめた手を口元に添え、今度はしおらしい態度で話し出した。
「ねえ麗くん、あたしもう怒ってないから」
「いや、別れたよね?」
「あたしも大人になったの。許してあげる」
「いや、別れたよね?」
「少しのあいだ距離おいてただけじゃない」
「いや、別れたよね?」
心の底からの煩わしさが丸出しの麗さまの対応。そして冷ややかな眼差し。耐えきれなくなったのか、女の人はわぁっ…と盛大に泣き出してしまった。
その騒がしさは否が応でも他人の注目を浴びてしまう。レジカウンターの中では、店員さん達も何やら小声で話し合い始めた。
麗さまは「面倒臭せぇ…」とこれまた心底嫌そうにため息をつく。そしてわたしの方を向くと「ちょっと待っててね」と呟き、女の人に「来て」と促すと…連れ立って店外へと出ていったのだった。
─────────
残されたのは、わたしと流星さま。
彼はしゃがみこみ、一番低い位置に陳列されているボトルを手にしては棚に戻す動作を繰り返している。
「流星さま…どうしましょう…」
「俺はリンスインがいーな。楽だから」
「違いますっ!麗さまのことですっ!」
「麗ー?自分で何とかすんだろ」
そう言って彼は再びシャンプー選びに没頭してしまった。珍しく悩んでいるようだ。
取り残されたわたしはひとり、悶々とした気持ちを抱え込む。
…さっきの女性は、麗さまの…言うならば、まあ『そういう』人。
そりゃ、そんな人が一人や二人いたって全くおかしくはない。…ということはつまり…
「流星さまに…も、居るんです…よね?その…元…彼女さんというか…なんというか…」
…彼だってそうだ。
「ん?あー、居たよ。今は土ん中だけど」
「つ、土…ですか??」
彼からの返答は、のんびりとした口調。
その答えに、先日聞こえてきた彼らの会話が思い出された。