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BeLoved.
第26章 【所詮は僕らオスなんです】
「声でけぇんだよ。丸聞こえだぞ」
ボンクラ。と背後から聞き慣れた台詞と声がした。こんなことを言ってくるのはわたしが知る限り一人しかいない。
「麗さ……ま"っ!!?」
そう。振り向いた先にいたのは確かに彼だ。にも関わらずわたしの声が裏返ってしまったのは…彼がスーツに身を包んでいたから。
麗さまは自営業。なので普段は専ら私服。こんな風に正装した姿を目にすることは滅多にない。それこそ彼らがわたしを迎えに来てくれた『あの日』以来だ。
あれ?でも今朝出掛けたときは違う服装だったはず。どこで着替えたんだろう。…息が止まるくらい画になっているのは言わずもがな。…しかも彼は夜なのにサングラスをかけている。その姿はまるで…えっと…
「どこの経済ヤ◯ザかと思ったわ」
…どうしてこの人は思ったことをそのまんま口にしてしまうのか。わたしの脳裏を過ったものと同じ言葉を流星さまは笑いながら告げる。しかも指差して。
対して麗さまは怒りよりも…呆れ顔だった。
「お前毎回同じ事言ってよく飽きねぇな」
「お互い様だろー?あ、俺ら注文済みよ」
わたしの横に腰を下ろした麗さまは「ただいま」と優しく告げてくれた。サングラスのフレームに触れながら「このままで許してね」と付け加えて。
もちろん頷いた。姿形は怖くても、中身は優しい彼だから。…しかし、解れかけた緊張は次の呟きで再び首をもたげた。
「夕飯に牛丼食うとは思わなかったな…」
「す、すみません!お嫌いでしたか…?」
「ううん、違う。牛丼ておやつだよね?」
…彼もまた違う意味で『住んでいる世界が違う』ことを認識した瞬間だった。
─────
「なー麗これ端から見たら追い込みじゃね?」
「闇金のって言いてぇんだろ?つまんねぇよ」
デカくて柄悪い男二人で女一人囲ってさ。と楽しそうに話す流星さまと、テーブルに置いたスマホから目を離さずに返す麗さま。…その片手はわたしの片手と結ばれている。流星さまから見えないように、テーブルの下でしっかりと。