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BeLoved.
第27章 【カレハミエルヒト。】
「え?」
「俺も見てたけど、子供なんかいなかったよ」
瞬間、背筋に冷たいものが走った。
冷房が効きすぎている訳じゃない。…あんなにはっきり見えたのに?もう一度前方を向き直る。信号で停止しているため、距離は近い。更に前の前の車のブレーキランプに照らされて、辛うじて運転席に座る人影は見えたけど…子供の姿は…ない。
「いいい今座ってるんですよきっと!…そ、それに麗さまには見えなかったんです!暗いし、わたし両目1.5ですし!きっと視力的なアレで…」
「俺両目2.0だよ。これ度なし」
知らなかったっけ?と眼鏡をずらしながら言われ一縷の望みが絶たれた。彼は淡々と続ける。
「この眼鏡、光が眩しすぎる時があるから掛けてるだけだよ」
「そ…そうなんデスカ…」
出会って一年以上。一緒に暮らし始めて約4ヶ月にして、初めて得た情報だった。矯正なんかしなくても彼は『見える人』だったのだ。
「っあー…スッキリした。やっぱ人間寝ねーとダメだ」
珍しく(?)絶妙なタイミングで流星さまが目を覚ました。すかさず振り向き、前方の車を指差しながら尋ねた。自分でも半泣きになっているのがわかる…。縋りつく勢いなのも。
「りりり、流星さまっ?!ああの車、後ろに子供一人、いますよね?!」
「は?どれ?」
眠い目を擦りながら身を乗り出し、眉間にシワを寄せ流星さまは指差された先を凝視した。
「あー、うん。子供ね。いるわ」
「ほっ…ほらっ!やっぱり居」
「でも1人じゃねーよ。3人いる」
「!!!」
とどめを刺されたうえに追い討ちをかけられた。そんな感覚。顔がこわばり息を飲んだ。しかしお構い無く、流星さまは続ける。神妙な声と面持ちで、ご丁寧にも指差してくれながら。
「子供は2人。後ろの席で遊んでる。あ、今こっちに手振った。んで、車の上に女が1人」
恐る恐る視線を向けたけど、言われたものは…見えない。
「やややっ、やめてください!?!…ふ、2人でわたしのこと、からかってるんですよね?!?」
説明してくれるその手を掴み、ご主人様たちの顔を交互に見やりながら訴えた。そうであって欲しいと願いを込めて。
「…?未結、知ってるんだよね?」
わたしが本気で怯えていることにようやく気付いたらしい麗さまが不思議そうに尋ねてきた。
「な…なにが……ですか…っ?」
「このボンクラが霊感持ちって」