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第27章 【カレハミエルヒト。】

流星さまを親指で差しつつ麗さまは横目でこちらを一瞥した。それだけでも充分察せられる位わたしの顔面は蒼白し引きつっていたようだ。

「……なに。流星お前、隠してたの?」

ルームミラー越しに流星さまを見やりながら、珍しくばつの悪そうな口調で麗さまは言う。
しかし当の流星さまは…ケロリとしたもの。

「そんなんじゃねーよ。言わなかっただけ。視えない奴に言っても意味ねーもん」

彼は指先でわたしの頬をつつきながら、感心した口調で続けた。

「でも未結よく視えたなー、あんな浮遊霊。まぁ車上の女だったらやばかったけど。俺のやつ伝染った?」
「な、な…っ?!」

『霊感はうつる』という話は耳にしたことがある。…ということは、わたしより遥かに付き合いが長い麗さまは…?

「視えないよ」

安定の即答。そういえばさっきの子供もいなかったって言っていたものね。よかった…必ずしもそうなる訳じゃないんだ。安堵したのも束の間。

「でも信じてはいるよ。昔こいつといる時に女の霊を視たから。俺そいつに殺されかけたもん。詳しく聞きたい?」
「…結構です…」


─────────


青信号に変わり発車したあとも、件の車が道を曲がり見えなくなっても、わたしは彼らの方に顔を向けたままだ。怖すぎて前を向けない。

「だから運転代わったんだよ。流星さっき"憑かれた"って言ってたでしょ。危ねぇもん」
「今日みたく人混みだとさ、たまーに変なのが憑いてくんの。できればそーゆー時ってハンドル握りたくねーのよ。何あるかわかんねーから。未結のおかげでもう平気だけど」

面倒くせーよなー、と頷き合う二人。…そうだったんだ……ん?じゃあさっきのキスの時は……考えるのよそう……

「、未結~、んな顔すんなよ。幽霊自体はいつでもどこでも居んの。現に今俺の隣に顔半分ない女座ってっけど、おまえ視えねーだろ?そんなもんなんだよ。気にすんなって」

…流星さまは、フォローしてくれてるんだよね。にこにこしてるけど、怖がらせて楽しんでるんじゃないよね。

「流星うるせえちょっと黙れ。…だからあの時も俺ら、挨拶したんだよ」

窘めのあと、麗さまは静かな声でそう言った。

「…あの時…?」
「俺と流星が、君のアパートに行ったとき。…お祖母さん、居たんだって。君の後ろに」

それは思ってもみない告白だった。
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