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BeLoved.
第3章 【契約成立】
核心を突いた言葉に息を呑んだ。
…こんなことってあるの?
「イチから人間関係築かなくていーから、俺ら的にはすげー楽なんだよね」
趣味嗜好も分かってくれてるし、何より信頼できる、と流星さまは続けてくれた。
麗さまは同意するように小さく頷くと、懐から封筒を取り出しわたしに差し出す。
「…で、これ。読んでおいてもらっていいかな」
受け取ったそれの中身は、綺麗に三つ折られた一枚の紙。開いた大きさは、A4サイズくらいだろうか。
ワープロ打ちされた文書には『雇用契約書』と銘打ってある。
主な職務は泊まり込んでの家事労働全般。即ち『住み込みの家政婦』だ。
勤務時間、基本8時間。変動あり。福利厚生について。休日……等々、勤務概要が記載されているけど…目が滑ってしまう。
「……」
正直、今のわたしにとってこれは、願ってもない申し出だった。
また家政婦業に就ける。住む場所も確保できる。
しかもその奉公先は、勝手知ったる相手。
それに……
「…ここまでは仕事の話。ここからは、俺らにとっての本題ね、未結」
麗さまの言葉に、紙から視線を上げた先。
彼らの表情は変わっていた。
それまでの穏やかさや、砕けた感じがない。彼ら本来の鋭い眼差しは、まっすぐわたしに向けられていた。
全身に走った緊張から紙を持つ手に力がこもり、掌には汗が滲む。
まるで蛇に睨まれた蛙のような心境だ。
「あのさ」
口火を切ったのは、流星さまだった。